世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2017年7月10日

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 6月6日付の米フォーリン・アフェアーズ誌ウェブサイト掲載の論説で、イタリアのアジア専門家であるカザリーニが、米英がEUから離れつつある中、中国がその空白に割って入り、EUとの関係を強化する方向にある、と述べています。論説の要旨は以下の通りです。 

iStock.com/Alvinge

 トランプが西側同盟国を疎外し、英国がEU離脱を進める中、中国は静かに西側諸国に手を伸ばしている。6月1-2日のEU・中国首脳会議では、地球温暖化防止のために新しい緑の同盟を締結した。世界政治における新たな中・EU関係が始まっているのかもしれない。

 その1つの分野が通貨である。中国は、外貨準備の3分の1以上をユーロで、2分の1以上をドルで保有しているが、1999年以来ドルの保有は30%減少している。ドルからユーロへの移行傾向は、今後も継続すると見られている。

 欧州は、これまでにも中国の金融に関する野心の多くを支えてきた。2015年12月には、特別引出権(SDR)の通貨バスケットに人民元を含めるIMFの決議を全会一致で支持した。今や、EUと中国の間の貿易は米中間のそれに匹敵し、中国にとって欧州は米国以上の対外投資先だ。

 他方、欧州議会やいくつかのEU加盟国からは、中国には相互主義が欠けているとの批判もある。中国では、銀行や金融の開放が限定的であり、国内市場に対する外国からの投資に制限がある。欧州委員会は、中国の鉄鋼輸出が欧州の多数の雇用を危険に晒して鉄鋼部門を傷つけている、と主張している。

 とはいえ、首脳会談ではいくつかの合意も生まれた。中国とEUは、米国なしでも、汚染を減らし、海面上昇に対処する努力を継続するとともに、化石燃料の削減や多くの環境技術の開発、アフリカを中心とする貧困国の援助を目的とした資金の調達にも合意した。

 こうした中で、EUと中国は安全保障・防衛に関する関係も強化していく可能性が高い。さらに英国のEU離脱は、EU軍事委員会と中国人民解放軍との間の構造化された対話メカニズムの確立を促進しよう。英国は、こうした動きが米国に間違ったメッセージを送り、「米英の特別な関係」を損なう恐れがあることから、このような枠組み作りに一貫して反対してきた。これは英国が常にEUを単なる貿易ブロックに留め、グローバル・パワーになるのに必要な力と能力を与えることを拒否してきたからである。だが、今日、英国はEUを離脱し、トランプは西側の同盟国を疎外している。米国の世界的優位性に挑戦する潜在的可能性を持つあらゆる問題について、EUと中国との関係深化が容易になるだろう。

 しかし、中国とEUの連携は、堅実なパートナーシップというよりも、Brexitとトランプという共通の利害関係がもたらす便宜上の結婚となろう。我々は、米英の新たな力学が、中国とEUの新たな関係を永続的なものにしていくのかどうか、注視する必要がある。

出典:Nicola Casarini ‘A New Era for EU-China Relations?’ (Foreign Affairs, June 6, 2017)
https://www.foreignaffairs.com/articles/china/2017-06-06/new-era-eu-china-relations

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