中国メディアは何を報じているか

2017年7月6日

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 中国の保険大手、安邦保険集団の呉小暉会長が拘束された。かつての最高指導者・鄧小平の孫娘と結婚し、一代でグループを急拡張。ニューヨークの高級ホテル、ウォルドーフ・アストリアを高額で買収するなど「蛇が象をのむ」と評される海外での派手な買収で名をはせた。拘束直前まで経済ニュースの財新メディアとのつばぜり合いを繰り広げ、注目されたが、あっけなく表舞台から消えてしまった。今の中国では鄧小平の姻戚ですら安全ではないと知らしめたこの騒動。背景には政治的な勢力争いもある。

(写真:AP/アフロ)

財新のネガティブキャンペーン

 海外で金融機関を次々買収し、トランプ大統領の娘婿のクシュナー上級顧問との仲の良さで有名だった呉会長。そんな彼と財新の「決戦」は、週刊誌『財新週刊』が4月28日に「安邦のマジックを突き抜ける」というカバーストーリーを掲載したことで始まった。2004年に設立された安邦が、いかにして中国国内で総資産で3本の指に入る保険会社に成長し、猛烈なまでの国内外での買収を繰り広げ名を馳せるに至ったかを分析したものだ。

 財新が安邦について否定的な報道をするのは初めてのことではない。2015年1月には「安邦の大冒険」と題した報道で、呉会長が3度結婚していると報じた。それによると、2人目の結婚相手は浙江省の副省長の娘で、3人目は鄧小平の孫娘。彼女との間に子供もいるが、すでに婚姻関係は終わっているとしている。

 4月28日の報道では、安邦の経営上の数々の疑問点を指摘した。たとえば、「呉会長の家族が安邦をコントロールしている」とし、「安邦の101の直接あるいは間接の法人株主の最終的な背後にいる株主は、86人にさかのぼることができる。言い換えれば、安邦の619億元の登記資本金の98%の最終的な出資責任は折り重なった101の会社を通してこの86人の株主にまで追跡できる」と紹介。16年に株式の権利変更を行い、呉会長の父方と母方双方の家族の影を薄めたものの、実際には自分たちの所有を覆い隠すための代理人を立てたに過ぎないと指摘している。

 また、安邦が関連企業を利用して、相互に投資し合い、それにより実態がないまま資本を増しているとも指摘している。「安邦の関連企業の株主を子細に分析すると、(安邦が14年に増資した)499億元のうち少なくとも半分以上、はなはだしくはすべての増資の真実性に疑問をさしはさむ余地がある。資本を『創造する』真の奥義のひとつは、これらの会社の間で互いに出資し合うことで、背後にいる株主はいずれも安邦のリーダーと密接な関係があるようだ」とする。

 こうした疑惑の指摘を受けて、2日後の4月30日に安邦は反撃に出る。ホームページ上に以下の声明を発表し、これが多くのメディアに転載された

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