世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2017年7月11日

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 この論説の筆者のイアン・ブルマは、1951年生まれのオランダ人で、日本に留学して映画を学び、日本のサブカルチャーにも強い変わり種です。現在は、米国で教職についています。

 本件論説は、いささか荒っぽい議論ではありますが、その趣旨には賛成できます。日本でも、日米同盟解消論が出てきていますが、それには賛成できません。そういう議論は、寒風の中、僅かに残ったシャツ一枚まで「役に立たないから脱ぎ捨てろ」と言っているのに等しいです。

 本件論説に関連しては、次の点に注意を払っていく必要があります。

 まず、メルケルの発言は同盟懐疑論者によって都合の良い引用のされ方をしています。メルケルの発言は「他の者たちに完全に依存できた時代は、ある意味で終わりました。それは、この数日[トランプとのやり取りで]私自身、体験したところであります」というものであり、更に「我々ヨーロッパ人は、自分達の運命を自分たちの手に収めなければなりません。我々は、自分達の生活や運命のために自分たちで闘わなければならないということを認識せねばなりません」と続きます。

 これは、トランプの米国に対する訣別宣言ではありません。米国がこれまでNATO欧州諸国に求めてきた国防費増強(GDPの2%が目標)をドイツ世論に納得させること、同時に秋の総選挙で社会民主党(SPD)が反米思潮をかきたてて票を稼ごうとしていることの裏をかくこと、の2つの目論見が底にある発言です。

 トランプ政権について言うならば、同政権がNATOとか日米同盟をいい加減に扱う政権と見なすことは適当ではないでしょう。トランプはラジオのトーク・ショーを長年やっていた人物であり、既存の権威をこきおろしては――破壊するのではない――喝采を得るトーク・ショーを今でも続けている面があります。しかし、米国の戦略的利益は、予算権を握る議会、ドル体制と連銀、国防総省と米軍、そして国務省を中心に確固として保持されているのです。

 今後もトランプ大統領は、中国と「取引」して日本を将棋の駒扱いする時があるでしょう。しかし、そのようなことはトランプ大統領に限られたことではありません。日本はそのような動きには抵抗しつつ、現在やっている通り対米直接投資を充実させ、ドル価値の維持を助け、一方自主防衛能力は拡充しながら、日本を守る米軍とは共同作戦する体制を充実させていけばいいのです。

  
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