2024年4月23日(火)

WEDGE REPORT

2017年7月8日

 
デモの様子(写真・武田信晃)

 そして、午後から行われる民主化を求めるデモにどのくらいの人数が集まるのかが注目された。従来、集合場所は銅鑼湾(コーズウェイベイ)地区にあるビクトリア公園の東側にあるサッカー場だが、今年はそこで香港政府による返還20年記念祝賀イベントが開催。中国のロケット「長征1号」が展示されるなど、デモの気勢をそいだ。結果、デモの集合場所は同公園の西側となった。

 今回のデモの参加者は、主催者の民間人権陣線の発表で6万人、警察発表で1万4500人と前年を大きく下回った。デモでは、完全普通選挙の実施、1国2制度の維持の他、仮釈放されたノーベル平和賞受賞者の劉暁波に対し、「外国で治療を受けさせろ」と書かれたプラカードが多く見られたのが今年の特徴だった。

 現場にいた30歳で教師のキースは「20年前の返還時のことは、小学生でしたが覚えています。今の方が息苦しいですね。林鄭月娥(キャリー・ラム)新行政長官が再び愛国心教育を推進すると発言しましたけど、私が学校で教える際には『事実は事実』として教えています。場合によっては私の考えを加えることもありましたし……。本当に繊細な問題なので難しいです」と教育現場の息苦しさを打ち明けた。

 60代で、病院勤務の関淑貞は「とにかく香港政府のやっていることはほとんどがダメ。共産党による統治には反対だし、香港の『核心』的価値は守らなければならない」。習主席が「核心」と共産党に位置付けられたことをあてこすった。

国家主席は来港したけれど…

 冒頭、香港は「商人の街」と書いた。筆者は習主席来港中、香港郊外のある企業を訪れたが、営業は通常通り。習主席が来港している緊張感などは全く感じられず、実際、話題にすらならなかった。関心はゼロと言っていいほどだ。デモの人数が予想を大幅に下回る6万人にとどまったのは、雨が降ったことや、「中国には何を言っても仕方ない」と香港市民が諦めてしまったという面もあるが、実際には(熱しやすく冷めやすい香港市民にとって)、ここ数カ月間は大きな政治的な混乱もなく普通に経済活動を行えているということが大きい。

 香港は間違いなく経済的に中国に依存している。香港にも大挙して中国企業がやってきており、香港証券取引所にも上場している。ただ、経済的依存度のみで香港が中国化したと見るのは一面的だ。中国企業が、香港の商習慣に合わせている側面も無視できない。香港で会社を経営している筆者の感覚でも、中国企業が増えたからと言って香港内でビジネスがし辛くなったということは一切ない。〝法治都市〟としてもしっかり機能しているからだ。


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