田部康喜のTV読本

2017年7月12日

»著者プロフィール
著者
閉じる

田部康喜 (たべ・こうき)

東日本国際大学客員教授

福島県会津若松市生まれ。幼少時代から大学卒業まで、仙台市で暮らす。朝日新聞記者、朝日ジャーナル編集部員、論説委員などを経て、ソフトバンク広報室長に就任。社内ベンチャーで電子配信会社を設立、取締役会長。2012年春に独立、シンクタンク代表。2015年10月から東日本国際大学客員教授として地域振興政策を研究、同大・地域振興戦略研究所副所長を兼務。

 アーサー・コナンドイルの探偵小説・シャーロック・ホームズシリーズの舞台を19世紀初頭のロンドンから現代に舞台を移した、英BBC制作の「SHERLOCK 4」が第1回「六つのサッチャー」(7月8日)で幕を開けた。第2回「臥(ふ)せる探偵」(7月15日)、第3回「最後の問題」(7月22日)のシリーズである。

地下鉄・ベーカーストリート駅のホームズ像(撮影:筆者)

 ホームズとコンビを組んでいる元軍医のジョン・ワトソン(マーティン・フリーマン)が、物語のなかで共同生活を営む「ベーカーストリート221b」の住所にある建物は「シャーロック・ホームズ博物館」になっている。作者のコナンドイルの執筆に因む品物、写真の展示……。私も昨秋のメディアの研究旅行の途中で立ち寄った。地下鉄のベーカーストリート駅を出ると、長身のホームズの銅像が人々を迎える。

 ホームズが実在の人物と想定して、出生から趣味、人物像などについて知識を競い合う「シャーロキアン」は、世界的な現代版の人気によって増えているようである。それは、シャーロック・ホームズ役のベネディクト・カンバーバッチの魅力によるところが大きい。

 「予感とは世界を覆った網目の揺らぎだ。それがわかれば未来を予測できる」

 ホームズのきざなセリフも彼なら許される。

原作を巧みに現代に置き換えて
シャーロキアンを満足させてきた

 今シリーズは、前回の「SHERLOCK 3」(2014年)の最終場面で、スキャンダルをネタに脅迫を繰り返すメディア王を射殺したホームズが、政府の諜報活動を担う兄のマイクロフト(マーク・ゲイティス)によって東欧のスパイ活動に送り込まれた回顧シーンから始まる。

 小型ジェット機に乗り込んでわずか4分後に、ホームズは飛行場に呼び戻される。ビルの屋上で自殺したはずの宿敵・モリアーティがテレビ電波をジャックして「会いたかった、会いたかった、会いたかった……」と繰り返したからだ。

 コナンドイルの原作「最後の事件」のなかで、スイスのライヘンバッハの滝つぼを臨む岩場において、ホームズと悪のネットワークの主宰者であるモリアーティ教授は死闘を繰り広げて、ふたりは滝つぼに落下する。探偵小説の執筆に疲れ、長編文学に挑みたかったコナンドイルは、ホームズを葬り去ってシリーズを終わらせるつもりだったのである。

関連記事

  • PR
  • 新着記事

    »もっと見る