大人の週末NAVI

2010年8月18日

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ピーテル・ブリューゲル 大きな魚は小さな魚を食う
1557年 エングレーヴィング ベルギー王立図書館所蔵 ©KBR

 この絵の前ですみずみまで描きこまれたモチーフを覗き込むようにして眺め、「この小さい魚が表してるのはね・・・」と会話する親子やカップルも多い。

 Bunkamuraザ・ミュージアムでブリューゲル版画展を実現させた廣川暁生学芸員に、展覧会のみどころを伺った。

ブリューゲル展のみどころは?

――まず、今回の展覧会を企画したきっかけを教えてください

 これまで、Bunkamura ザ・ミュージアムでは、エッシャーの版画展など、見て面白く心に残るような特徴ある版画展を開催してきました。また、ベルギーの美術を紹介するということも続けてきていたところでした。

 そうした一連の流れに沿って、ベルギー王立美術館に所蔵されていたブリューゲルの全版画と同時代の版画も、ぜひ日本の若い方々にも見ていただきたいと思って企画しました。

――今回展示された版画を見て、これまで知られていなかったブリューゲルの一面を知った方も多いのでは?

 ブリューゲルというと、日本では油彩画が有名で、キリスト教の教義的メッセージを伝える作品、それから、農民の風俗を描いたことでも知られています。そうした油彩画の仕事をしながら、一方で画業の初期の頃に版画をはじめていて、そこには後の油彩画の創造性に通じるような版画も平行してつくっているんです。こんな作品を描いていることは、美術が好きな人でも知らなかったかもしれません。

――ブリューゲルが活躍した16世紀は、版画を制作するネットワーク(発行者・制作者・販売者)があったそうですね。

 版画ができるまでの流れは、油彩画のそれとは異なります。前述のように、ブリューゲルは油彩画も描いていますが、16世紀という時代においては、油彩画を注文する購買層というのがおおよそ決まっていました。油彩画については、クライアントから注文を受けて、作品を制作するというのが一般的な流れだったのです。画家は、クライアントの要望に応じた絵を描いたりするので、おのずと主題は限定的になります。

 でも版画というのは、もっと市場が自由で広かった。版画は、一般の不特定多数の人々に向けて制作されるものだったんです。当時の最大のマスメディアとも呼ばれるほどです。だから、版画は油彩画のようにその制約に縛られなかった。そのことが、ブリューゲルの版画が、力強いイメージで、自由に描かれていることの理由のひとつだと思います。

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