2024年4月19日(金)

家電口論

2017年7月27日

主催者側は、どこまで譲歩可能か?

 さて展示会主催者側の反応はと言うと、東京都サイドには酷なようだが、この案で譲歩することはできないという。と言うのは、先に書いた通り、できる展示会が限られてしまうからだ。展示会は集客ができなければ意味がない。このため、毎年同じ頃に催される。相撲の本場所の様なモノである。毎年、同じ場所で、同じタイミングで行われるのがポイントだ。今の日本は展示会場が少ないため、東京ビッグサイト、幕張メッセなどは、ほぼ毎日の様に展示会をしているのが現状。

 それを考えると「同じ面積」「365日全部」が変更条件となる。

 また参加者自体への影響も大きい。例えば、コミケ(コミックマーケット)を例にとってみよう。コミケは夏、冬の2回開催と相場が決まっている。そして平然と並ぶ行列が、海外にも報道されるように規模も大きい。マンガに興味がない人でも、聞いたことはある展示会だ。

 まず日時であるが、開催するには準備が必要だ。同人誌を作るための原稿も必要だし、印刷もしなければならない。コスプレーヤーは、オリジナル衣類を作らなければならない。1カ月前倒しなければならないとなると、参加者も「えらいこっちゃ」である。

 また同人誌の買い手も、バイト代1月分くらいで、別にお金を工面しなければならないかもしれない。こちらもえらいこっちゃである。

 展示会の日程を変更し、後日辻褄を合わせることは非常に難しく、手厳しいようだが、日本の展示会の現状を踏まえると、この東京都の提案に「OK」とは言えないことになる。

この際、展示会場を作ってしまえ! その代わり……

 いろいろ取材して感じたのは、「そもそも、それでなくても他の国に比べて少ない展示会場を、オリンピック会場に使うという発想が可笑しい」ということだ。

 エコ五輪の考え方は、空いている施設を使って安く上げるという考え方。しかし、今回のは使われている施設を無理矢理使うということだ。しかもビジネス規模からして、不足している展示会場を使うとしているため、矛盾が起きているのだ。

 さて、また別の側面もある。今、東京五輪に間に合うように、東京はホテルの建設ラッシュだ。このため、一時期、取れないと言われた東京の宿も確保できるようになりつつある。しかし、その後はどうなるのだろうか?東京は海外の観光客を呼べるほど、魅力的な都市なのであろうか?

 そうした時、観光で人を呼ぶのも大切だが、それよりもビジネスで人を呼ぶことも大切なのではないだろうか? 観光資源はなかなか整わないが、ビジネスは人間が経済活動をする限り生み出されていく。

 展示会は、海外から人に来てもらえる大きなチャンスだと思う。ネット、通信が発達した現在でも、現物が見られるのは重要だ。日本より歴史がない、中国のモーターショーはいろいろな国から、東京モーターショー以上に人が集まる。しかも、展示会は凝った建築は必要でなく、どちらかと言うと安く出来る建築だ。私は新しい、ビッグサイトサイズの展示会場を作り、それをメディアセンターとして使う方がベターだと思う。そうすると、メディアセンターの問題も片付くし、その後、展示会場に改装すれば、展示会場不足の問題が片付くからだ。

 ただ、その時に東京都サイドから主催者側にもオーダーして欲しいと思うのは、「展示の質を、より上げる」と言うことだ。中国にお客を取られたモーターショーであるが、工夫次第によっては海外からお客を呼び戻すことなどが可能になるからだ。海外ビジネスマンがこぞって見たいと思う展示会が増えれば、日本のビジネスには大いにプラスになるはずだ。そういう想定だと、東京都も投資をする価値があると思われる。

 こんな提案はどうだろうか?

  
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