世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2017年7月31日

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 この社説は、現在の香港の状況と中国の政策を基本的にはよくとらえています。

 香港に対し「一国家二制度」という方式を適用したのは鄧小平ですが、「一国家」の面が強くなり、「二制度」の面が徐々に形骸化しているとの、この社説の判断はその通りでしょう。

 香港訪問中の演説で習近平は「中央の権力や香港基本法の権威に対する挑戦は絶対に許さない」「一国家二制度は成功したが、『一国家』こそがこの制度の根幹である」「国家の歴史や民族の文化に対する教育や宣伝を強化する必要がある」と述べました。中国の姿勢ははっきりしています。

 中国経済の高度成長の結果、香港の中国経済(GDP)に占める比重は1997年には18%位であったのが、2015年には3%くらいになりました。要するに「金の卵」を生み出す香港とは必ずしもいえず、経済的繁栄のために自由都市としておいておくメリットは少なくなっています。その上、中国の国内政治は安定を重視し、政治的自由を認めるよりも抑圧する方向に進んでいます。この二つが中国の香港政策の背景にあり、その面での変化がなければ、この方向性は変わらないと思われます。

 しかし、このような傾向には若者が不満を示しています。若者の自己規定として、「自分は中国人ではなく香港人」と言う者が60%を超えてきています。中国の強圧的政策が彼らの反発を呼び、情勢が緊迫化する恐れはあります。しかし、習近平の政治の方向性が変わらない限り、こういう抵抗は結局、押しつぶされてしまうように思われます。

 この香港の情勢は台湾の政府・国民に「一国家二制度」の解決を受け入れさせる可能性を大きく減じる効果があると思われます。

 香港問題への中国の対処は、中国がどういう国になるか、国際社会でどういう役割を果たしていくのかを判断する一つの材料です。

  
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