特別対談企画「出口さんの学び舎」

2017年7月31日

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「キリスト教は、教義の根本のところがものすごくいいかげんです」

出口:じゃあ逆に、なぜキリスト教は、世界的な宗教になることができたかというと……

 

佐藤:いいかげんだからですね(笑)。

出口:それは、まったくそうだと思います。

佐藤:たとえば、みんなクリスマスのお祝いをするでしょ。

出口:セント・ニコラウスですね。

佐藤:ええ、そうです。あれは1950年代からなんです。それまでクリスマスなんて祝わなかった。アメリカで、つい最近起きた習慣ですからね。

出口:伝統って、だいたいそんなものですよね。

佐藤:キリスト教の教義では、神様が一人のはずなんだけど、一方で「父なる神」と「子」と「聖霊なる神」の3つである、というね。

出口:「三位一体」は、わかったようでわからない考え方ですね。

佐藤:そうでしょう。それから、イエス・キリストが、人間なのか神なのかもよくわからない。真の神と真の人。教義の根本のところが、ものすごくいいかげんなんですよ。

出口:不思議ですよね。

佐藤:わからない中にも傾向がありまして。正しく理屈で説明できるようになると、それは異端で火あぶりになるんです。

 たとえば、父なる神がいたとき子と聖霊はいなくて、子なる神がいるときは父と聖霊がいなくて、子なる神キリストがいなくなったら聖霊になったんだ、という考え方が昔からあるのですが、それは異端でかなりの場合、火あぶりになっているんです。

 あるいは、神様がキリストを養子にしたという説もある。これも異端とされました。理屈で説明できるのは、全部ダメなんです。

 ビジネスの世界では、論争したとき理屈で正しい人はどれくらい勝ちますか?

出口:これは難しい質問ですね。僕はよく「数字、ファクト、ロジック」と言っているのですが、データに基づいて科学的な判断をしたほうが、長い目で見ると勝つと思っています。

佐藤:なるほど。

出口:ただ、人間は感情の動物なので、常にそうとは限らない。時間軸をロングランでとらえれば、合理性が勝つと思うのですが、そうでないときはやっぱり時の勢いに押されますよね。

 僕も経験があるのですが、バブルが崩壊した時は「みんな大変やで!」という風潮でした。当時は、体力のある日本で一番大きな保険会社に勤めていたので、「20年後を考えて世界展開したほうが会社は大きくなる」と主張したのですが、「こんなに大変な時は、世界に出て行くより国内を固めないと」となって、完敗してしまった。

 みんなが大変だと思っていると、大変だという気持ちが勝ってしまうんです。歴史においても、長期的に合理的な判断が出来る人が現れればいいですけれど、人間はそんなに賢くないので、ついついその場の雰囲気や時代の空気に流されてしまう気がします。

リテラシーを高めることの必要性

佐藤:私もそう思います。最近の現象だと、総理大臣も官房長官も「北朝鮮が大量のサリンを作っている」と言うでしょ。これは事実だと思うんですよ。でもその先で、「サリンを弾頭に乗せて飛ばすかもしれない、大変だ」とか言っているわけです。だとしたら、記者から質問が出るはずです。

出口:どんな質問が?

佐藤:高校の化学レベルの話ですが、サリンは熱に弱いんです。生物兵器もそうですが、高熱に弱いんですよね。サリンを大量に作って弾道ミサイルにつけたとしても、着弾したときには全く無力化しているはずなんですよ。

出口:打ち上がったときには大変な殺傷力を持っているけれど……。

佐藤:爆発した瞬間の熱も、上がったときの摩擦熱もすごい。

出口:大気圏から再突入するときも、たいへんな熱が生じますからね。

佐藤:だから、毒性はないはずなんです。本来、記者は「総理、サリンは熱に弱いんじゃないですか。それとも弾頭の高熱に耐え得る新しいサリンが開発されたんですか?」と聞かなきゃいけないのですが、みんな「大変だ、大変だ!」ってそれだけです。

出口:それは、政治部の記者が化学の知識がないということですね。

佐藤:ええ、関係していますね。でもこれは高校レベルまでの化学の知識がいかに重要かってことなんです。

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