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2017年8月3日

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――トイレの話ですが、以前から考えていることがあります。たとえば行き止まりの廊下に男女のトイレが並んでいる場合、女子トイレが奥にある方が犯罪機会を減らせるのではということです。ビルや駅にあるトイレを観察していると、そのパターンが多いですが、逆のこともたまにあるなと思います。

小宮:女子トイレが奥にある方が良いというのはその通りです。奥にある方が「間違えた」と言い訳しづらいので侵入しづらいですし、女性が後をつけられた場合、男子トイレを越えてついてきたら、「おかしいな」と察知することができる。第三者から見ても「なぜあの男の人は奥に行くのだろう」と感じます。男子トイレが奥にあると、女性はすぐ後ろをついてこられても、不審に思いづらいですし、逆に「疑ったら申し訳ない」という心理になる。ただ、私の観察では男子トイレが奥にあるパターンの方が多い気がしますね。

韓国・天安駅のトイレ。左手前から男性用、女性用、右手前から男性身体障がい者用、女性身体障がい者用、となっており、すみ分けができている。また女性用トイレが奥に配置されているのもポイント(=入りにくい場所)

――それから、トイレの構造で気になるのが盗撮被害についてです。女性に聞くと、盗撮の現場を目撃したり、盗撮被害に遭いそうになったという声は割とあります。海外のトイレでは洋式であることもあり、個室ドアの下が大きく開いていることが普通です。用を足しているときに足の部分が見える。これは連れ込み被害があったら外から一目でわかるという防犯効果がある一方で、ドアの下からカメラを入れる盗撮が容易なのでは?と。

小宮:今のように携帯電話や撮影機器が発達して盗撮が横行するようになる前の時代からこのパターンで、盗撮までは考えたレイアウトではないと思います。ただ、盗撮といっても、一番発覚しづらいのはカメラを内部に設置してしまうこと。そうすると、設置している瞬間を見られたくないので、海外式のトイレの方が設置しづらいですよね。また、洋式トイレはドアに向かって腰かけるように設置されていますから、用を足している際に目の前からカメラが入ってきたらすぐ気付きます。個室内に潜んで待ち伏せするという場合でも、日本のようにドアの下部が閉じている方が隠れやすいですね。

地域のことを自分で考える視点を持つ

――先ほどマイノリティへの配慮が不十分という話がありましたが、犯罪被害に遭いやすい子どもや女性の視点が反映されていない場所は多いのかなと感じます。

小宮:子どもの性被害は、警察はほとんど把握できていないと思いますよ。子ども自身も被害に遭ったと気づかないケースが多いですし、親に言っても親が「誰にも言うな」と口止めすることもあります。犯罪機会論って、犯罪原因論のようにダイナミックではない。小さなことの積み重ねです。だから日本では研究者が少ないのかもしれない。

――ダイナミックではないというのは?

小宮:犯罪者を根本から変えるとか、そういう風にカッコよくない。効果抜群の素晴らしい療法の発明とかそういうことではないですから。トイレの構造とか、遊具の周りにさりげなくフェンスを設置とか、変えたところですぐに効果はわかりません。積み重ねをコツコツとやって、一つひとつ犯罪を減らしていくのが機会論です。

――一方で、機会論はわかりやすいと思います。原因論は目に見えない動機・気持ちを研究しますが、機会論は目に見える風景を考えるので一般の人でも、子どもでも理解しやすいです。

小宮:そうでしょう(笑顔)。全然難しくないのです。

――小学生向けに犯罪機会論を踏まえた「地域安全マップづくり」の講座を開かれていますね。みんなで一緒に取り組むワークショップで、クラスの雰囲気が良くなったり全体の学力もあがったりすることもあったと聞いています。

小宮:つまりは当事者意識を高め、自分たち自身の問題解決能力を高める練習になるということですね。それは犯罪機会論でなくても、入り口は子育てでも介護でもいいのですが、地域のことを自分たちで考えるという視点を持つと個々の力は発揮されやすいと思います。そして、地域では、1+1は、3にも4にもなるんです。

――マップ教室はどのくらい続けているのでしょうか。

小宮:2002年に考案し、2004年から自治体での導入が始まりました。でも、実施率1割以下の県があったり、考え方がうまく伝わらず間違った方法を取ってしまっているところも多いんです。なので、これからも少しずつでも広めていければいいですね。

今回のポイント
・「不審者に気をつけて」は大人でも難しい
・景色の中から犯罪機会を見抜く練習を
・マイノリティの視点を地域で考えることに意味がある


*写真:筆者提供

 



  
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