BBC News

2017年8月3日

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米ホワイトハウスは「dump=ごみため、ボロ屋」なのだそうだ。新しい住人によると。

米ゴルフニュースサイト「Golf.com」によると、ドナルド・トランプ米大統領は、自分が就任以来、米国各地のゴルフ場を頻繁に訪れている理由について、一緒にプレイする相手に、「あのホワイトハウスはすごいごみためだから」(That White House is a real dump)と話したのだという。

トランプ氏はこの報道を「偽ニュース」だと否定し、「ホワイトハウスが大好きだ、あれほど美しい建物(住宅)はめったに見たことがない」とツイートした。

一方で、父ビル・クリントン元大統領の任期8年間から内部を良く知るチェルシー・クリントンさんは、「ホワイトハウスの案内係、執事、メイド、料理人、生花担当、庭師、配管工、技師、学芸員の皆さん、毎日のお勤めに感謝します」とツイートした

では実際に「ごみため」なのか?

建築専門サイト「 Architectural Digest (建築ダイジェスト)」が今年7月に掲載した、建物内の写真を見る限り、とてもそうは見えない。

とはいえ、合計132室もあるだけに、写真のない部屋はもしかするとこれほど良い状態でなかったりするのか。

少なくとも公表されている部屋の見た目はどれも、ボロやごみためからは程遠い。

ホワイトハウス内の仕組みや職員の働き方などについて、歴代の大統領について本にしてきたブラッドリー・H・パターソン氏は、2008年の著書「To Serve the President」で、毎年のホワイトハウス予算では160万ドル(約1億7600万円)の修繕費が計上されていると書いている。

また、2016年の「アメリカ進歩センター」報告によると、全米では3000万世帯の住宅が危険な状態にある。そういう状態で暮らす人たちにとっては、ホワイトハウスは決して「ボロ屋」ではないだろう。

同報告は住宅の危険要因として、「構造の劣化、暖房の不良、配管の損傷、ガス漏れ、鉛の溶出」などを挙げている。

つまり、米国の平均的な世帯人数で計算すると、トランプ大統領の統治下で、住民への「相当な危害」が懸念される住宅に7600万人近くが住んでいる可能性があることになる。

趣味の問題?

今の大統領が新居に不満だというなら、それは個人的な趣味の問題かもしれない。

そもそも「建築ダイジェスト」の形容を借りるならば、ホワイトハウス内の私室はいずれも、「礼節と洗練された趣味のオアシス」なのだ。

一方で、トランプ氏の私邸はどうだろう? ニューヨークのトランプ・タワーは。トランプ氏が暮らすペントハウスの装飾は、紛れもなくまったく異質の美的感覚を物語っている。

独裁者の美的感覚をテーマにした著作のあるピーター・ヨーク氏は今年3月、米政治ニュースサイト「Politico」で、トランプ・タワーの装飾について、「ある意味では、上昇志向の表れだ。多くの市民が夢見ることしかできない財力の表現として」と書いた。

「しかし同時に、よく似た例がいくつかあり、その類似性が重要だ。トランプ氏のスタイルが似ているのはイタリア・ルネッサンスやフランス・バロックではなく(派手さはルネッサンスやバロックを模したものだが)、もっと最近のものだ。トランプ流スタイルを最も端的に表現するなら、『独裁者風』と呼ぶのがいいと私は思う」とヨーク氏は書いている。

『Dictator Style(独裁者スタイル)』という著書のあるヨーク氏によると、トランプ氏のペントハウスは「自分はとてつもない金持ちで、想像を絶する権力の持ち主だ」と大声で叫んでいるようなものだ。これは、ワシントンの抑制されたスタイルと、少し違うどころの騒ぎではない。ワシントンで多く見かける「新古典様式」の公共の建物はいずれも、「抑制を通じて安定性と信頼性を喚起する」ことを意図しているのだからと、ヨーク氏は書く。

とはいえ、ホワイトハウスに自分流のスタイルを持ち込むのはどの大統領でもやることで、トランプ氏もすでに自分なりのデザイン変更を施したはずだ。

大統領執務室の赤いカーテンを金色のものに付け替えたことは、すでに知られている。しかし非公開の住居部分で何がどうなったのかは、はっきりしない。メラニア夫人は今年初めに、インテリアデザイナーのサーム・カナリカム氏に住居部分のデザインを依頼しているが、実際にどういうデザイン変更が行われるのかは不明だ。

一方で、メラニア夫人の上級顧問、ステファニー・ウィンストン・ウォルコフ氏はライフスタイル・サイト「WWD」に対して、「トランプ夫人はホワイトハウスの歴史的側面をとても大事に思っています。サームの伝統的デザインと高い技術によって、心地よいエレガンスをさりげなく組み合わせて、大統領とファーストレディーと(息子の)バロンが自宅と呼び、家族の時間を過ごす場所を、作り上げていく予定です」とコメントした。

大規模リフォームの費用は

確かに1940年代後半のホワイトハウスは、「ごみため」や「ボロ屋」呼ばわりされても仕方がなかった。大恐慌時代と第2次世界大戦のせいだ。

記録によると、ハリー・トルーマン大統領が初めて訪れたホワイトハウスの住居部分は、狭すぎるというだけでなく、浴槽が床板にめりこんでいた。そして床はきしむどころか、「ぐらぐら揺れていた」のだという。

1948年に始まった大規模修繕は、複数情報によると総工費570万ドルだった。この時にかなりの増築も行われた。現在では年間補修費だけでその3割ほどの金額がかかると言われるだけに、全面的な大規模修繕を現時点で実施するとなったら、どの程度の金額になるのか想像に難くない。

英国では、バッキンガム宮殿が10年ぶりの大規模修繕を予定している。3億6900万ポンド(約535億円)かかる予定だが、775室のバッキンガム宮殿はホワイトハウスよりやや大きい。

バッキンガム宮殿の前回の大規模修繕は1950年代のことだった。つまり、鉛管や配線や給湯システムの老朽化など、エリザベス女王の公邸が抱えてきたのと同じようなトラブルが、ホワイトハウスの華やかな表面の裏で進行しているのかもしれない。とはいえ、ホワイトハウスでは1993年以来、設備の刷新を繰り返してきたため、バッキンガム宮殿ほどの状態にはなっていないかもしれない。

他方、フランスではベルサイユ宮殿が2003年以降、5億ユーロ(660億円)規模の大規模修繕の最中で、工事を終えるまでにまだ3年かかる。

要するに、ホワイトハウスでもし大規模修繕を行うとなると、その費用は数千万ドル単位になる見通しだ。トランプ氏が公約してきた数十億ドル規模の壁の費用も捻出しなくてはならない以上、ホワイトハウスの改修は当面、最優先事項とはならなさそうだ。

(英語記事 Is the White House really a dump?

提供元:http://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-40810326

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