2024年4月25日(木)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2017年8月11日

 これは、良い社説です。モスル奪還は、確かに慶賀すべきことではあります。しかし、ISなき後のモスルの再建、統治、イラクの情勢の正常化は、困難な課題です。共通の敵がいなくなった後、イラク政府とイラクの諸派閥、米国、クルド、トルコ、イランなどの勢力が分裂、抗争し始めると、元の木阿弥になってしまいます。社説は、その危険を的確に指摘しています。

 宗派抗争は避けなければなりません。その要諦は、スンニ派を疎外しないことにあるように思われます。モスルはスンニ派の都市であり、その再建をモスルのスンニ派指導者に主導させることが重要であるとの、この社説の指摘は適切であるように思われます。将来的には、イラクは連邦国家になるべきであると思われますが、その前段階として地方自治、地方分権を進めることは重要でしょう。

 ISは領土を支配し、カリフ国を名乗っていましたが、その領域基盤は崩壊しつつあります。ISがリビアやシナイ半島、さらにフィリピンなどで支配領土を得る可能性はありますが、より可能性が高いのは、アルカイダ的なネットワーク化したテロ組織になることでしょう。これはこれで脅威です。しかし、支配領域の石油輸出や税金などの資金源がなくなるので、資金力は大幅に低下し、人員リクルート力も大幅にダウンすると思われます。

 最も危険なテロ集団としてのISは、終わりつつあると見てよいのではないでしょうか。テロ組織も成功してこそ成長するのであり、敗北し続ければ、衰退していくことになります。

  
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