2024年4月19日(金)

前向きに読み解く経済の裏側

2017年8月14日

外部委託の増加も、統計上はサービス化

 人々が製造業企業の社員だと思っている人も、統計上はサービス業の社員だったりします。たとえば工場の清掃を行なう人は、製造業企業の社員ではなく、清掃請け負い会社の社員かもしれません。清掃業務が外部委託されているかもしれないからです。

 清掃業務が外部委託される可能性は三つあります。一つは、「規模の利益」の追求です。各社が清掃用具を購入するより、清掃業者が清掃用具を一括して購入した方が安上がりだ、といった事が考えられます。

 第二は、給与水準の違いを利用したものです。一般に、サービス業の給与水準は製造業よりも低いので、製造業が自社の社員に清掃を行なわせるよりも、清掃業者に委託した方が安上がりになる場合が多いのでしょう。

 今ひとつは、子会社を作ることでポストが作れることのメリットです。日本企業は終身雇用制ですが、全員が部長や重役になれるわけではありません。そうなると、同期が部長や重役になった場合、なれなかった人の体面を保つために、「子会社の重役にする」という手法が用いられる場合があります。そのためには子会社が多数必要になるのです。

高齢化で医療と介護の需要が増加

 日本経済が高齢化しつつあることも、製造業のウエイトを低下させる要因です。高齢者は、若者と比べて物を買わない一方で病院や介護施設を頻繁に利用します。そこで、製造業が雇う労働者が減り、病院や介護施設が雇う労働者が増えることになります。特に、病院や介護施設は、労働集約型産業ですから、大量の労働者を雇うので、製造業から医療・介護業界にウエイトがシフトしやすいのです。

貿易収支は概ね均衡、今後は赤字化の見込み

 こうした要因によって、かつて大幅な黒字であった貿易収支は、概ね均衡するようになっています。その意味では、日本はもはや「モノ作り大国」とは言えなくなっているのです。自分で使う分しか作っていないのですから(輸出入によって自国製品と他国製品の交換はしていますが)。

 少子高齢化が続くと、日本は労働力不足により、モノ作りが難しくなっていくかもしれません。「現役世代が全員医療と介護に従事していて、製造業で働ける人がいない」といった事態が考えられるからです。

 そうなると、モノは輸入することになり、貿易収支が赤字に転落するでしょう。

 まあ、それでも日本経済は大丈夫です。日本は海外に巨額の資産を持っていて、そこからの利子配当の受取が巨額にのぼっていますから、それで輸入代金を支払えば良いのです。モノ作り小国になっても、資産大国なので大丈夫だ、というわけですね。

  
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