話し上手な奥様と違って寡黙な昌司さん。しかし縫製全体の統括と職人の育成を担当していて、ルフィの麦わら帽子の再現や極細麦わらの縫製技術を開発したのも彼である。その実力は世界でもトップクラスなのだ。
帽子作りには大きく、麦稈真田(ばっかんさなだ)という麦わらで編んだ真田紐を縫い上げるブレード系と、帽体という型を使ってプレス機で成型するシート系帽体というやり方があり、パナマハットなどは後者のやり方で製作する。
ちょうど昌司さんがブレード系でストローハットを縫っていたので見学させてもらう。
年季の入った専用のミシンを使って、まず真田紐の先を曲げて頭頂部になるへそを作る。へそを中心に渦巻きが外へ広がるように縫っていくとだんだん小さな円盤状になっていく。これを手で持ち上げながらさらに縫っていくと、あっという間に帽子の形になってしまう。
「簡単ですよ」と言いますが、いえいえ、とんでもない。石田四兄弟妹の三男坊の昌司さんは子どもの頃から模型を作るのが得意で、麦わら帽子の作り方も工場で職人さんたちを見ていて、自然と覚えてしまったのだとか。
ところで、笠岡市は生きている化石と呼ばれるカブトガニの繁殖地としても有名である。市内にはカブトガニ博物館もあり、恐竜の生態模型があって人気の公園は、今年の夏もおしゃれにパナマハットを被った子供連れのママたちで大賑わいでありました。
(写真・阿部吉泰)
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