World Energy Watch

2017年8月16日

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競争力を左右するのはバッテリー

 2015年の世界のEV用リチウムイオン製造量は2800万kWh程度と言われている。昨年の生産台数が8万4000台の米国テスラが量産モデルの生産を開始し、来年には年産50万台体制になる。電池は、パナソニックと共同で手掛ける米ネバダ州のギガファクトリーで生産される。この工場のフル生産能力は年産3500万kWhだ。EVに加え、再生可能エネルギー用の蓄電池なども手掛けるテスラは、さらにギガファクトリーを建設すると発表しているが、場所が発表されているのは中国上海のみだ。

 自動運転車の開発を行っている米アップルも、中国メーカCATLと組み、EV用電池の開発を行っていると7月に報道された。両社ともコメントしていないが、アップルは自動運転車をEVにするとの噂も流れている。CATLは、2020年までに現在の電池製造能力を6倍に引き上げ年産5000万kWhにする予定だ。昨年10万台のEV製造を行った中国BYDも電池製造能力を引き上げるとしている。投資の神様ウォーレン・バフェットを株主に持つ同社は米国に進出しEVバスの製造を開始する。

 中国でのEV製造を発表したダイムラーは、中国BAICと共同でEV用電池の工場を北京に建設すると発表した。中国では日系、韓国メーカによる電池工場の新増設もあり、2020年にはEV用電池製造能力は1億kWhを超えると予想されている。その時点での中国の世界シェアは6割を超える。

 欧州でも電池への取り組みは加速している。英国政府は2億4600万ポンド(350億円)の電池開発用助成金の創設を7月に発表した。保守党の選挙公約では2050年までに内燃機関車を全廃するとしていたが、2040年に販売禁止する政策が発表された。気候変動問題への取り組みというよりも、産業政策の側面が大きいように思える。

 ドイツ政府は2030年時点でEV車のシェアを20%にするとしているが、ダイムラーは、5億ユーロをかけドイツにも電池工場を建設する計画を発表している。スウェーデンでも40億ユーロの巨大電池工場の建設プロジェクトが発表されている。EVでは世界の先頭を走っている米テスラも巨額の資金調達を行うと発表した。

中国に対抗するテスラだが

 世界のEV市場をリードしてきたテスラは、今年3月に増資と転換社債により11億5000万ドルの資金調達を行った。8月にはさらに15億ドルの社債の発行を発表した。今年のテスラの資本支出額は20億ドルと発表されているが、今後の充電スタンドの整備、ギガファクトリー建設の必要額を考えると、現在の資金調達額では不十分と指摘するアナリストもおり、さらに資金が必要とされる。

 テスラの8月上旬の時価総額は約600億ドル。20兆円を超えているトヨタの数分の一だが、510億ドルのGM、430億ドルのフォードを超えている。しかし、利益は出ておらず赤字が継続している。今年第2四半期の売り上げは、27億9000万ドル、4億ドルの損失だった。テスラは太陽光パネル、蓄電池事業も手掛けているが、売り上げの90%近くはEVが占めている。期待先行で株価は高いものの、中国に対抗するには潤沢な資金が必要であり、資金調達のためにはEV事業の黒字化が必須になってきている。黒字化が遅れれば、将来の資金調達に暗雲が立ち込めることもありそうだ。テスラの売り上げ、利益の推移は図の通りだ。

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