World Energy Watch

2017年8月16日

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EVの経済性と環境性能

 各国がEVに取り組む理由の一つは、電池価格さえ下がればEV車の価格が内燃機関車並みになり、日常の維持コストが安いEVの販売がさらに加速する可能性があることだ。競争力のあるEVで世界の自動車市場でのシェアを伸ばすことができる。 

 1kWhの電池で8km走行可能とし、1kWhの電気料金を25円とすると1km走行に3円強必要だ。ガソリン車の燃費を1リットル当たり20kmとし、ガソリン価格を100円とすると1km走行に5円必要だ。政府の助成などがあるため電気料金が相対的に安い途上国では、さらにEV車の競争力が増すことになる。

 気候変動問題にはEV車はどの程度寄与するのだろうか。これは国により電源構成が異なるので、国ごとに考える必要がある。1kWhの電気を作る際に排出される二酸化炭素の量は電源により異なる。最も二酸化炭素排出量が大きいのは石炭火力だ。石油火力だと排出量は石炭の8割、天然ガス火力だと6割程度になる。再生可能エネルギー、原子力はほとんど排出がない。石炭火力の比率が高い中国では、1kWh当たりの二酸化炭素排出量も多く681グラムだ。

 1kWh当たり8km走行可能なEVでは、1km当たりの二酸化炭素排出量は中国では85グラムになる。一方、ガソリン1リットル当たりの二酸化炭素排出量は2322グラムだ。1リットル当たり20kmの燃費とすると1km当たりの二酸化炭素排出量は約120グラムとなり、石炭火力が多い中国でもEVの排出量が小さい。日本と米国でのEV車の二酸化炭素排出量を表-2に示した。

日本の戦略は?

 中国、欧州、米国は産業政策の観点からもEV普及に力を入れている。いま、戦線はEV用電池にまで拡大している。テスラと組んだパナソニックがEV用電池では世界シェア一位を維持しているものの、中国が製造国シェアの半分以上を占めており、今後中国でのEV製造台数増に合わせ電池の製造でも中国が他国を圧倒してくるものと思われる。

 部品数が少なく、技術的なハードルが低いEVで世界シェアを握るためには、コストも極めて重要な要素になる。日産自動車はNECとの共同事業の電池製造拠点を中国企業に売却することを決め、コストの大きな部分を占める電池の製造を中国に任せる戦略を取った。テスラのようにパナソニックと共同の形をとりながら自社で製造を維持する戦略もある。そんななか、トヨタが電池の電解液を固体化した全固体電池を使用するEVを2022年に売り出すと、7月末に日米で報道された。全固体電池は容量を大きくすることが可能であり、また充電時間を短縮できる長所がある。5年間で市販品価格をどこまで下げられるのか注目される。電池がEVのシェア獲得のカギとなるなかで、どの戦略を取ったメーカが世界をリードするのだろうか。

  
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