オトナの教養 週末の一冊

2017年8月18日

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本多カツヒロ (ほんだ・かつひろ)

ライター

1977年横浜生まれ。2009年よりフリーランスライターとして活動。政治、経済から社会問題まで幅広くカバーし、主に研究者や学者などのインタビュー記事を執筆。現在、日刊サイゾーなどに執筆中。ブログ:http://golazo-sala.cocolog-nifty.com/pinga/

――本書に登場する台湾の事例では、アートと歴史的な建物のリノベーションを目玉にしています。

『世界の地方創生 辺境のスタートアップたち』(松永 安光,徳田光弘 編著、漆原 弘,鷹野敦,中橋恵,鈴木裕一,宮部浩幸 著、学芸出版社)

松永:台湾では、日本統治時代の建てられた建物を中心に「文創(文化創意)」をテーマにクリエイティブ空間として再活用しています。日本でもそうですが、地方創生においてアートが果たす役割は大きいですね。

――再活用するときには、リノベーションを行い使用しているわけですね。日本でも近年はリノベーションはカッコイイという風潮がある一方で、基本的には古くなった建物は取り壊し、新築するといった動きが目立ちます。これにはどんな理由があるのでしょうか?

松永:費用面では、リノベーションも新築も同じくらいかかります。では、何がリノベーションをするインセンティブになっているかと言えば、建物の歴史の重みなどの付加価値が生まれるからです。たとえば、ロンドンのキングス・クロス駅の再開発では、周辺の倉庫をリノベーションし、現在はそこでアートスクールを開いて人気を集めています。

――日本でも地方に行けば、東京では見かけないような古い家屋がまだ残っていますね。

松永:そういった家屋をリノベーションし民泊に利用すると、海外からの観光客が特に喜ぶようですね。

 実は、我々のHEAD研究会も活動を始めた頃には、大阪市内にある大正時代の長屋を再生した豊崎長屋を視察に行き、シンポジウムを開きました。その後、各地でリノベーションのニーズがあり、手法などを提案した。北九州市では、リノベーションスクールを定期的に開催しました。同スクールでは、まず参加者と街を見て回り、どこが気に入ったかを集約して、5~6人のグループにわけ、参加者には三日三晩で提案をまとめてもらい、採算計画までつくり、最終的には当該地域の実務案件をテーマにしているので、そのオーナーに提案するまでやってもらいました。すると、さまざま自治体から同じようなスクール開催の問い合わせが殺到したため、現在はHEAD研究会とは別の組織で対応しています。それだけリノベーションに関するニーズは、日本でもあるわけです。

――ヨーロッパを中心に視察してみて、辺境で地域創生が成功する場合とそうでない場合の違いは何だと思いますか?

松永:イタリアでは現在「アルベルゴ・ディフーゾ」という空き家を再利用し、街のサービスとつなげて、客をもてなすのが流行っています。

 元々その土地で育ち、ミラノなどの大都市で起業を目指したけれど挫折をした人が、これを担っている場合が多いんです。彼らの中では、そういった経験がある人は提供できるサービスの質が高いので成功しやすいですよね。

 ヨーロッパの人たちは一般的に長期休暇を取るので、空き家に宿泊するのは1週間単位です。長期間の滞在で、いかに街のサービスとつなげた多彩で飽きの来ないメニューを提供できるかが鍵になります。イタリア料理を習う、初歩のイタリア語を学ぶ、伝統楽器を習うなどさまざまなメニューが用意されています。そういった点も成功しやすいポイントです。

――さまざまな地域を視察した経験から、日本全国で地域の活性化を考えている人たちへメッセージはありますか?

松永:一番重要なのは、一人でも地元に志を持った人物がいる、もしくはそういった人物を招くことに理解のある人物がいることです。

 現在の各地の地方創生の取り組みを見ていると、コンサルタントが考えたどこの土地でも同じような提案を、地方創生にあてられた交付金で行っているだけという地域が多いように思います。

 しかし、それぞれの地域にはそれぞれの特性があるわけですから、それを活かし、地元の子どもたちが大人になってもその土地で生活していきたいと思うような場所にするのが、望ましい姿だと思いますね。

  
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