世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2017年8月21日

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 イランはイラクで圧倒的な影響力を持っており、それは、イランがイラン・イラク戦争の経験から、イラクが二度とイランの脅威にならないよう考慮した結果である、と上記解説記事は述べています。

 イラン革命後1年半で起き、8年間続いたイラン・イラク戦争は、イランにとって悪夢のような経験でした。イラン革命でシャー時代の軍が事実上崩壊し、国防体制が整っていなかったときにサダム・フセインに攻撃され、一部の領土を占領され、多大の死傷者を出しました。イランが、イラクが二度と脅威にならないようにと考えるのはごく当然のことであったのでしょう。

 しかし、イランの動機が何であれ、イラクが事実上イランの従属国家的地位に陥ってしまったことの地政学的影響は、小さくありません。

 まず、イランが同国から地中海への回廊を確保することを意味します。シリアのアサド政権に対する支援体制が強化されるのみならず、レバノンのヒズボラ支援も強化されます。これは、イランの影響力の拡大を意味し、サウジ、イスラエルにとって脅威となるでしょう。

 また、イラクのシーア派支配体制が強化されることになります。イラクの将来の安定にとってシーア派とスンニ派の融和が欠かせませんが、イランの影響力が圧倒的になれば、融和はそれだけ困難になるでしょう。

 他方、イランによるイラクの支配は、必ずしもイラクのシーア派に歓迎されているとは限らないとのことです。同じシーア派といっても、イラクのシーア派は、同時にイラク人、アラブ人としての自覚を持っているといいます。イランによるイラク支配があまり目につくようになると、イラクのシーア派との軋轢が生まれる恐れがあります。従属国化は、管理上いろいろな問題を生むものです。

 しかし、いずれにせよ、イラクの将来についての米国の影響力は、限られたものにならざるを得ないでしょう。

  
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