2024年4月24日(水)

No Science, No Business

2010年9月4日

 そしてこの現象は、激しくイオンが移動する急速充放電を行うほど起きやすい。つまり、町中の電気スタンドで急速充電をくりかえせばそれだけ劣化が 早く、大電流を流して加速性能を引き出すのも難しいわけだ。

 また、コバルトは高価な希少金属で、電池のコストの7割を占めるともいわれている。

 この問題を克服するために、リーフには、NECと共同開発した、+電極にマンガン酸リチウムを使うリチウムイオン二次電池が採用されている。

 マンガン酸リチウムの結晶は、コバルト酸リチウムと違って、層と層の間に柱が立つような構造になっている。そのため、層の間にフルにリチウムイオ ンを抱き込めるコバルト系よりも、容量は20%ほど少なくなる。

 しかし、このおかげで結晶構造が丈夫になって、リチウムイオンが完全に抜けてしまっても壊れにくい。材料そのものに備わっている性質によって、急速 な充放電を行っても安全で、長期使用時の劣化の割合も少なくなっているわけだ。くわえて希少金属のコバルトでなく、豊富なマンガンをを使うので、コストも 比較的低く押さえられる。

「リーフ」に使われている電池のモジュール。セルと呼ばれる薄い電池が、4枚入っており、リーフ全体では、これを48個使用する。

 リーフの電池は、基本のセルが薄いラミネート構造のようなシートで、これを4枚重ねて金属製のカンの中に納めたものが一つのモジュールになってい る。最終的にリーフ1台あたり48個のモジュールが使われている。

 モジュールあたりの重さは公開されていないが、3~4キロの間とのことで、総重量は150キロ~200キロほどになるようだ。

 試作品のセルやモジュールを持たせて貰った感じ、電池のシートに比べて、モジュールのカンが結構重く、おそらく自動車が衝突した時でも破損しない ような強度にするためだろう。ただ、これは今後の開発で、安全性を確保しつつ、可能な限り軽くする方向に改善されていくと思う。

 これらのセルは、バッテリー・マネージメント・システムによって、肌理細かくコントロールされている。これはたくさんあるセルのうち、どれにどの タイミングで充電、または放電させるかを配電盤のように指示する回路だ。一つのセルの性能が落ちると、回りも引きずられて性能が落ちる性質があるため、特 定のセルだけ消耗したり、劣化しないような監視することで、バッテリーライフを長持ちさせることにもなる。

課題は、充電環境整備と電池の質を高めること

 電気自動車用の急速充電器は、東京電力の50キロワットタイプが日本のスタンダードになりつつあるが、これを使った場合、30分で8割まで充電で きるという。全国の日産ディーラーには、この急速充電器が設置されることになっている。

 電気自動車はその性質上、スピードを出せば出すほどバッテリーが早く消耗する。
つまり、渋滞した都心で、それほど速く走れないような時ほど燃費が良く、高速で快適に飛ばすほどはやく消耗してしまう。

 日々の通勤や、市街地で使う分には燃料に困ることはまずないだろうが、週末のドライブなど、高速を使って遠出するような時には、どこかで充電しな ければならない可能性が出てくるわけだ。

 また、二次電池の宿命として、使って行くにつれて容量が少なくなり、航続距離が徐々に減っていく。予想では、5~10年くらいの使用で、2~3割 は容量が減るようだ。

 ただし、これは自動車を普段どういう場所に駐車させているか、どういう運転の仕方をしているかによって、かなり変化する。


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