ネルソン・コラム From ワシントンD.C.

2010年9月6日

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クリス・ネルソン (Christpher Nelson)

政治ジャーナリスト

アメリカのシンクタンク「サミュエル・インターナショナル・アソシエイツ」所属。特に日本、中国・台湾、朝鮮半島問題に焦点を当てたアジア外交政策のコンサルタント。1970年より下院外交委アジア小委員会のスタッフや上院民主党政策委員会のアジア政策顧問などを歴任した経験により、議会のみならず米政権の内情に詳しい。現在は、外交政策や通商問題のインサイダー情報誌「The Nelson Report」発行。

 最近、日本の政治と金融の世界でこれだけ動きがあるのだから、WEDGE Infinityの読者の皆さんに、ワシントンの政官界が関心と懸念を抱きながら事態を注視しているとお伝えできればよかったろう。

 あいにく実際は違った。ワシントンの大方の政治家と官僚はこの1カ月というもの、暑さに大汗をかいて過ごし、日本だけでなく世界の大半の問題に無関心だった。この間の唯一の関心事は、米国が切に必要としている国家再建を果たせずにいる中で、イラクおよびアフガニスタン戦争の費用を一体どうやって払っていくのか、ということだった。

 今月のコラムでは、2つのテーマを取り上げる。1つは、米民主党の今の窮状と、それが日本にとって問題となりかねない理由。もう1つは、北朝鮮の金正日(キム・ジョンイル)総書記が突如始めた「魅力攻勢」だ。

 中国は今、北朝鮮の最近の態度をもってして、米国、韓国、日本は6カ国協議に復帰すべきだと主張しようとしている。あくまで客観的に見ての話とはいえ、北朝鮮が2005年および2007年の6カ国協議での誓約を何一つ実行していないにもかかわらず、だ。

 まず、米国の内政から見ていこう。

オバマの魔法はもう解けた? 演説は特筆なし

就任後、イラクの状況についての、就任後初のミーティング(09/1/21)。1年8ヶ月が経ち、ようやく撤退のめどがついたものの、長期的な課題は依然残る。

 今月のコラムを執筆している最中に、バラク・オバマ大統領は、ことによれば決定的に重要な政治声明になるとされたスピーチを行った。イラク戦争の戦闘任務を正式に終了させるという選挙公約について勝利宣言をしたオバマ。彼は、ジョージ・ブッシュ前大統領が無礼かつ馬鹿げた「任務完了」宣言*注によって掘った罠には落ちないという難業を成し遂げると思われていた(あるいは、そう期待されていた)。

 読者の皆さんが本稿を目にする頃には、オバマ大統領の首尾について様々な報道を読んでいることだろうから、ここでは、我々の見たところ、演説は完全な失敗だったと述べるにとどめよう。

 大統領の演説は、人を鼓舞するものでもなければ、新しい政策課題を劇的に宣言するものでもなく、イラクでの戦闘任務からは解き放たれたものの、イラクおよびアフガニスタンでの長期的な責務は継続するという内容だった。

 しかし、だからといって、この間、外の世界が鳴りを潜めていたわけでも、ワシントンが世界で起きている事態に気づくのを待っていたわけではない。もちろん、オバマ大統領が2008年に大統領選立候補をした「魔法の力」を取り戻すのを待っていたわけでもない。決してそんなことはなかった。

 今月のコラムで我々が書きたいことは、ダイレクトに、なぜ民主党が11月に歴史的な敗北を喫する見込みなのかということではない。もっとも、下院の全議席と上院の約3分の1の議席が「改選」になる中間選挙で、民主党が大敗に向かっているのは事実だが・・・。

 8月末に発表された世論調査は、民主、共和両党の「支持基盤」は多かれ少なかれ安定しているが、オバマ大統領が2008年に大差で獲得した極めて重要な「無党派層」が大統領と民主党を完全に見限ったことを示しているとも言えるだろう。

 オバマ大統領自身は2012年まで再選を問われない。これはつまり、有権者が今回の選挙で、経済に関する怒りと不安を大統領にぶつけられないことを意味している。今の状況を見る限り、有権者は大統領の代わりに現職の民主党議員を手当たり次第に罰するつもりのようだ。

編集部注:2003年、当時のジョージ・ブッシュ大統領は、高らかにイラク戦争終結を宣言し、「任務完了(mission accomplished)」と述べた。だがそれがあまりに拙速な発言だったことは、ご承知の通りだ。

 
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