2024年4月20日(土)

前向きに読み解く経済の裏側

2017年8月28日

近隣自治体も同じことを考えるから過当競争となる

 久留米市にとって、子育て支援の予算を通すことが容易だということは、近隣自治体にとっては「何もしないと、若い住民が久留米市に転出してしまう」という恐怖を与えます。そこで、近隣自治体も、「少なくとも久留米市並み、願わくばそれを少し上回る子育て支援策」を策定する強いインセンティブを持つことになります。こうして、各自治体が「過当競争」を始めることになるのです。

 過当競争に巻き込まれると、容易には撤退できません。撤退すれば、近隣自治体に若者を奪い取られ、税収が減り、経済の活気も失われてしまうでしょう。「高齢者向けの予算を削っても、子育て支援を充実させなければならない」と各自治体が考えるようになるのです。

 国レベルでは難しいことを、各自治体が行うことで、結果として国レベルで子育て支援を充実させたのと同じ効果が得られるとすれば、それは素晴らしいことです。その結果、どの程度少子化対策の効果が上がるかは、やってみないとわかりませんが、冒頭に記したように、国難に対処するためですから、どんなコストを払っても、成功する確率がわからなくても、とにかくトライすることは良いことです。期待しましょう。

(追記)「産めよ増やせよ」ではない

 少子化対策というと、戦前の「産めよ増やせよ」という言葉を連想したり、産みたくない女性に強制的に産ませる政策を想像したりする読者がいるかも知れませんが、本稿で言う少子化対策は、そういうものではありません。誤解のないようにお願いします。

 一つは、「産みたくても産めない若者が、産めるように障害を取り除いてやる」ことを指します。「子育てする金がないから出産は無理」と考える若者に「子育て費用は支援するから、産んでも大丈夫だよ」と支援したり、「仕事をしながら子育てするのは難しい」と考える若者に「保育園が充実しているから、安心して子供を保育園に預けて働いて」と支援したりする、等々です。

 今ひとつは、子育て家族に巨額の補助金を出して、「そんなに補助金がもらえるなら、子供を産もう」と考える若者を増やすことです。エコカー減税は、「エコでない車を買う権利」を奪ったりしませんが、消費者がエコカーを買いたくなるように誘導するわけです。それと同じで、子育て支援策は、若者の産まない権利を奪ったりしませんが、産みたくなるように誘導するわけです。

  
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