世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2017年9月11日

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 ロシアが最近、対西側対決姿勢をとっている事例の一つに注意を喚起する論説です。

 軍というのは、演習を行うものです。演習は軍の練度や即応性を高めておくために必要ですから、演習を行うことをとやかく言うわけにはいきません。しかし、朝鮮半島での米韓軍事演習(キーリゾルブや乙支フリーダム・ガーディアン)が常に北朝鮮と韓国・米国との間の緊張を高めているように、演習は双方の緊張関係につながります。

 それで、冷戦中には、欧州では信頼醸成措置の一環として、東西の一方が兵力の集中をした場合、「兵力集中は攻撃のためではなく演習である」ことを通知し、場合によっては、それを確認するためのオブザーバーを招請することが行われてきました。この論説で「ウィーン文書」と呼ばれている合意が、今も有効に存在しています。

 ところが、ロシア側は、演習を複数の演習として、その各々を形式上、小規模にして通知義務やオブザーバー招請を回避しているようです。NATO側は、そのように非難しています。

 なぜロシアがそういうことをしているのか、よく理解できません。NATO側に対する嫌がらせとしか考えられませんが、NATO側が対抗して同じことをすれば、折角の信頼醸成措置が無意味化します。それは、ロシア側にもNATO側にも不要な緊張を強いることになります。

 この問題はロシア・NATO理事会で話し合うのが適当ですが、ロシアが参加兵員数について虚偽を言うということでは話になりません。Zapadは4年に一度恒例として行われてきたものであり、大体、大規模なものです。それに、演習の規模は衛星から見ればわかります。そういう画像でも示して、ロシアに注文をつければよいでしょう。ロシアがNATOの演習にはオブザーバーを出すが、自分の演習にはオブザーバー派遣を事実上断ると言うようなことは許されないとの姿勢を示すべきでしょう。

 ロシアは演習を、近隣国を威圧する手段として使ったり、演習と言って兵力集中したあと、実際に侵攻する場合があります。2014年のクリミア侵攻や2008年のグルジア侵攻がその例です。1968年、ソ連時代はチェコに突然侵攻しましたが、その前にも演習が行われています。

 プーチンは、対外的な問題を起こし、被包囲意識を醸成し、それを国内政治上の支持につなげようとしているのかもしれません。いずれにせよ、遺憾な事態です。

  
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