世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2017年9月14日

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 中東研究所(米国のシンクタンク)のシニアフェロー、アレックス・ヴァタンカが、Foreign Affairs誌のウェブサイトに8月14日付けで掲載された論説において、イラクのシーア派の過激な指導者ムクタダ・アル・サドルがサウジを訪問したように、イラクのシーア派グループの一部でイラン離れの動きが見られる、と指摘しています。論説の要旨は次の通りです。

(iStock.com/skalapendra/LuckyTD/aarrows)

 イラクのシーア派諸グループは、来年の議会選挙を控え勢力争いをしている。

 これらのグループを支援してきたイランにとって不快なことに、いくつかのグループは公にイランから距離を置いている。それが選挙民の支持につながるからである。

 イランは特にIS追放後のイラクでの権力分担で、イランが排除され、地域の支配の長期的利益が損なわれることを懸念している。

 いまイランでは、イラクでの動きが一時的な混乱か、それともイラクシーア派のナショナリズムの復活なのかで、議論が分かれている。

 このシーア派の内部紛争は、イラクを越えたイランの利益に影響を与える。

 イランにとってイラクのシーア派政治グループの梃子を得たことは、1982年のヒズボラ創設依頼の最大の外交上の成果であった。

 それだけにイランは、7月30日イラクシーア派の過激な指導者、ムクタダ・アル・サドルが、イランの宿敵サウジを訪問したことに驚きを隠し得なかった。

 イランは、サドルがイラクの政治で地位を確保するため、他のシーア派グループとは異なった動きをしがちで、サウジ訪問もその一つと見ている。

 サドルはサウジ訪問から帰国後、イラク政府がシーア派民兵組織を解体するよう要求した。イランはこれまでイラクにおいてのみならず、シリアでもアサド政権支援のためシーア派民兵組織を作り、武装し、展開してきたので、この要求は痛い。

 イランはサドルの要求は、シーア派民兵組織を重視するアバディ首相などのグループに対抗するためと見ている。

 イランにとってシーア派民兵組織を支配することは、イラクでの影響力確保に取ってのみならず、アサド政権支持にとっても必要である。

 さらに重要なことに、シーア派民兵組織は、イランの革命防衛隊と、革命防衛隊の特殊部隊クッズのスレイマニ司令官が創りだしたものである。

 したがってシーア派民兵組織の解体は、革命防衛隊がイラクやシリアで、政府を通じてではなく、シーア派民兵組織を通じて影響力を拡大しようとするやり方にとって打撃となる。

 イランとイラクのシーア派グループを切り離すことは、両者の関係が何十年にも及ぶものなので困難であろう。たとえ切り離しが始まったとしても、重要な結果をもたらすのには長い時間がかかるだろう。

 しかし、イランの懸念は残る。もしサドルにできることなら、他のシーア派グループもできるからである。

出典:Alex Vatanka,‘Iraq's Shiites Test Iran’(Foreign Affairs、August 14, 2017)
https://www.foreignaffairs.com/articles/iran/2017-08-14/iraqs-shiites-test-iran

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