世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2017年9月14日

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 最近湾岸地域から地中海に至る地域でのイランの影響力の増大が目立ちます。イラクではサダム・フセイン政権が打倒されたのち、シーア派政権が成立し、イランが圧倒的な存在感を示しています。シリアでは、ロシアと並んで、アサド政権の維持に成功し、レバノンではヒズボラを通じて影響を及ぼし、イエメンでは反政府派のホーシー族を支援してサウジに対抗しています。さらに、アフガニスタンでもタリバンを支援して影響力を増していると言います。

 イランからイラクを経てレバノンに至る地域は「シーア派の三日月地帯」とも呼ばれ、イランの影響力の増大を示すものとして、サウジなどスンニ派アラブ諸国が警戒を強めています。

 この「三ケ月地帯」で、イランにとって最も重要な国はイラクです。

 論説は、イランにとってイラクのシーア派政治グループに梃子を得たことは、1982年のヒズボラ創設依頼の最大の外交上の成果であったと言っています。その通りでしょう。

 そのイラクで、イランから距離を置く動きが出てきているとのことです。サドルが極端な例ですが、そのほかのシーア派グループの一部にも同様な動きが見られるといいます。イランがこの動きを警戒するのは当然です。

 イランでは、このような動きが一時的な混乱なのか、それともイラクのシーア派におけるナショナリズムの復活かが議論されているとのことですが、これは一時的な混乱と言うより、ナショナリズムの動きと見るべきでしょう。

 イラクのシーア派政権にとって、イランの支持は不可欠ですが、イランの影響力があまりに大きくなり、イラクがイランの属国と化すのを望まないのは当然です。

 イラクのシーア派グループのいくつかがイランと距離を置いているのは、選挙民の支持につながるからであるということは、イラク国民がイランに過度に依存することを望んでいないことを意味します。

 論説は、イランとイラクのシーア派グループを切り離すことは、両者の関係が長年にわたるものだけに困難であろうと言っていますが、両者を切り離すのではなく、イラクシーア派のイランへの過度の依存を防ぐということです。

 中東におけるイランの勢力拡大にとってイラクは要の国であるだけに、イランとしては、イラクとの関係に齟齬をきたさないために、イラクのナショナリズムに対する配慮は欠かせません。

  
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