補講 北朝鮮入門

2017年9月9日

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礒﨑敦仁 (いそざき・あつひと)

慶應義塾大学准教授

1975年東京都生まれ。慶應義塾大学商学部中退。在学中、上海師範大学で中国語を学ぶ。慶應義塾大学大学院修士課程修了後、ソウル大学大学院博士課程に留学。在中国日本国大使館専門調査員、外務省専門分析員、警察大学校専門講師、東京大学非常勤講師、ジョージワシントン大学客員研究員、ウッドロウ・ウィルソンセンター客員研究員を歴任。慶應義塾大学専任講師を経て2015年から現職。共編に『北朝鮮と人間の安全保障』(慶應義塾大学出版会、2009年)など。

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澤田克己 (さわだ・かつみ)

毎日新聞記者、前ソウル支局長

1967年埼玉県生まれ。慶応義塾大法学部卒、91年毎日新聞入社。99~04年ソウル、05~09年ジュネーブに勤務し、11~15年ソウル支局。15年5月から論説委員。著書に『「脱日」する韓国』(06年、ユビキタスタジオ)、『韓国「反日」の真相』(15年、文春新書、アジア・太平洋賞特別賞)、訳書に『天国の国境を越える』(13年、東洋経済新報社)。礒﨑敦仁慶応義塾大准教授との共著『LIVE講義 北朝鮮入門』(10年、東洋経済新報社)を大幅に改訂した『新版 北朝鮮入門』(東洋経済新報社)を17年1月に刊行予定。

第4回核実験

日時:2016年1月6日
地震波規模(マグニチュード):4.85
推定爆発規模:6~7キロトン
直前の情勢: 2015年12月21日にSLBMを発射したとみられるが、安保理は特別な反応せず。
事前の予告:予告声明はないが、2015年12月10日に金正恩氏が平川革命事績地を現地指導した際に「水爆」保有に言及。
中国への事前通報:なし
他国への事前通報:なし

実施後の北朝鮮発表:翌日の『労働新聞』は1面トップに「朝鮮労働党中央委員会 初の水爆実験を行うことに対する歴史的な命令を下達」という大見出しを掲げた。1面の半分ほどを占めるのは、命令書に署名する金正恩氏の写真。記事は大きめの活字で200字ほどの短いものがあるだけだ。記事の内容も実験そのものより、金正恩氏が党を代表して水爆実験を命じたという点に力点が置かれている。1面にはこの他、実験実施を命じて署名した金正恩氏の直筆命令書2枚の写真が配された。2面には「主体朝鮮の初の水爆実験完全成功」という政府声明が大きく掲載され、3面と4面で水爆に関する解説や「快挙」を喜ぶ国内の反応などを伝えた。政府声明は実験について「米国を主とする敵対勢力どもの日増しに増える核の脅威と狡猾さから国の自主権と民族の生存権を徹底して守護し、朝鮮半島の平和と地域の安全を頼もしく担保するための自衛的措置」だと主張した。

実験のポイント:北朝鮮は水爆実験と発表したが、規模が小さかったことなどから本当に水爆だったのか疑問視された。

第5回核実験

日時:2016年9月9日
地震波規模(マグニチュード):5.1
推定爆発規模:11~12キロトン
直前の情勢:2016年に入り、スカッド、ノドン、SLBMなどを連続発射。安保理は報道声明で非難。
事前の予告:予告声明はないが、金正恩氏が弾頭部分の大気圏再突入の模擬実験を視察し、「核弾頭爆発実験」を断行すると言及(3月15日公表)。
中国への事前通報:?
他国への事前通報:なし

実施後の北朝鮮発表:建国記念日(9月9日)に実施された。翌日の『労働新聞』1面トップは、建国記念日の関連行事を伝えた。核実験は1面最下段に「朝鮮民主主義人民共和国核兵器研究所声明」として報じられた。声明は「核弾頭の威力判定のための核爆発実験を断行した」というもので、「堂々たる核保有国としてのわが共和国の戦略的地位を否定しつつ、われわれの国家の自主的権利行使を悪辣に侵害する米国をはじめとする敵対勢力どもの脅威と制裁騒動に対する実質的対応措置の一環」だと主張した。紙面は全体として建国記念日に力点が置かれている。3面下部にも関連記事はあるが、核実験を外国メディアも報道したことの紹介と軍と国民が実験成功を喜んだという程度。どの記事にも写真は使われておらず、声明にも金正恩氏の名前は出てこない。

実験のポイント:「戦略弾道ロケットに装着できるように標準化、規格化した核弾頭」の製造能力を獲得したとアピールした初の核実験。それまでほぼ3年に1回のペースで強行されてきた核実験が「初の水爆実験」からわずか8カ月での実施だった。

第6回核実験

日時:2017年9月3日
地震波規模(マグニチュード):6.1
推定爆発規模:160キロトン
直前の情勢:7月に大陸間弾道ミサイル(ICBM)を2回発射。安保理は制裁決議2017を8月5日に採択。北朝鮮は8日、中距離弾道ミサイル「火星12」4発をグアム島周辺海域に向けて発射する計画を検討していると発表。29日に北海道襟裳岬上空を通過する軌道で火星12を太平洋に向けて発射。安保理は議長声明で非難。
事前の予告:朝鮮中央通信が当日朝、新たに製作したICBMの弾頭に装着する水爆を金正恩国務委員長が視察したと報道。
中国への事前通報:?
他国への事前通報:?

実施後の北朝鮮発表:翌日の『労働新聞』が、1面トップで金正恩氏が異例の党常務委員会を主宰して命令を下したことを報じた。会議で発言したり、命令書に署名したりしているのであろう金正恩氏の姿や、金正恩氏を含めた5人の常務委員が円卓を囲んでいる写真など6枚の写真が使われた。さらに1面下段に「大陸間弾道ミサイル(ICBM)搭載用水爆実験を成功裏に断行した」という核兵器研究所の声明を掲載した。声明は「ICBM搭載用水爆の実験の完全な成功は、われわれの主体的な核爆弾が高度に精密化されただけでなく、核弾頭の動作の信頼性がしっかり保証され、われわれの核兵器の設計および製作技術が核爆弾の威力を攻撃対象と目的によって任意に調整できる高い水準に到達したことを明白に示し、国家核戦力完成の完結段階の目標を達成する上で非常に意義のある契機となる」と述べたが、米国には言及しなかった。

実験のポイント:北朝鮮に対してこれまでにない強硬姿勢を見せるトランプ政権下で初の核実験。米国が軍事的措置を取れないと判断したものと考えられる。

  
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