高口康太の「中国ビジネス最前線」

2017年9月11日

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高口康太 (たかぐち・こうた )

ライター・翻訳家

1976年生まれ。千葉大学人文社会科学研究科(博士課程)単位取得退学。中国・南開大学に留学後、ライター、翻訳者として活動。著書に『なぜ、習近平は激怒したのか 人気漫画家が亡命した理由』(祥伝社)

中小企業の信用も可視化される時代

 芝麻信用には企業版もある。企業にとっては信用の可視化は個人以上に重要になりそうだ。「企業資質」「経営行為」「信用歴史」「関連関係」「履約能力」の五項目によって1000~2000点のスコアが決まる。個人版とは異なり、企業の信用スコアは公開されている。上場企業のような大企業でなくとも、簡易に自社の信用を可視化できるわけだ。

写真を拡大 アリババグループ各社の信用スコア


 芝麻信用の鄧一鳴副総経理は言う。「芝麻信用は信用データの可視化、信用シーンの連結、信用文化の普及に尽力しています。それぞれ説明しましょう。信用データの可視化ですが、個人と小企業の信用状況を数量化することで、より多くの人々や企業が自らの信用評価を持てるようになることを意味します。信用シーンの連結は、信用評価を活用できる場所を増やすという意味です。そして信用文化の普及ですが、より多くの個人や企業が信用を重視するように啓蒙活動を行います。

写真を拡大 芝麻信用の信用足跡ページ。代金後払い機能「花唄」を6回使用し、いずれも期限通り返済したことを記録されている

 これらの活動によって、信用情報の非対称を解決し、社会的取引コストを引き下げる。あらゆる場面、状況において、関係者はユーザーの信用状況を容易に確認できるようにする。誠実なユーザーはより良質な体験と利便性を得ることができる。信用評価が低い人物は不便となる。このような社会が到来することを希望しています。

 今、中国では信用関連の新たなビジネスが続々と誕生しています。今後10年間にわたる最大の成長スポットは信用ボーナスだとの期待が高まっているのです。伝統的産業に構造展開のチャンスをもたらすとともに、さまざまな新しいビジネスを生み出すものとなるでしょう」

中国政府が国策として推進する理由

 信用社会の構築は芝麻信用、あるいはアリババグループ及び関連会社だけが目指しているものではない。中国政府が大々的に推進する国策だ。2014年に国務院は「社会信用システム建設計画綱要(2014~2020年)」を発表しているが、なぜ信用システムが必要なのか、現状を次のように分析している。http://www.gov.cn/zhengce/content/2014-06/27/content_8913.htm
 

「信用がある者への奨励は足らず、守らない者の支払うコストが低すぎる。(……)誠実信用の社会的ムードはいまだ構築されず、生産現場での大事故や食品安全事件もしばしば起きる。詐欺、ニセモノ製造販売、脱税、学術不正などの現象はいかに禁止してもとどまることはない」

「現代市場経済は信用経済である。健全な社会信用体系の構築は、市場経済秩序の整理と規範化、市場信用環境の改善、取引コストの低下、経済リスクの防止をもたらす重要な施策であり、経済に関する行政の干渉を減らし、社会主義市場経済体制を整えるための切迫した課題である」


 その上で政治、ビジネス、社会、司法の四分野におけるシステム構築を2020年までに完成するとの目標を掲げている。同綱要に基づき、今や中国の各省庁、各自治体はさまざまな信用データベースの構築を急ピッチで進めている。税金の支払いから旅行中のマナー違反まで多種多様だ。

 芝麻信用も同綱要が発足する契機となった。2015年1月、中国人民銀行(中央銀行)は芝麻信用管理有限公司、テンセント系の騰訊征信有限公司など8社を信用評価機関として認定した。綱要では個人情報の保護を前提とした上で、「信用情報の交換、シェアのメカニズムを構築」するとの方針も示されている。

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