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2017年9月11日

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樫山幸夫 (かしやま・ゆきお)

産經新聞前論説委員長

産經新聞前論説委員長。政治部で中曽根首相番、竹下幹事長番、霞クラブ(外務省)詰め、ワシントン特派員、同支局長、外信部次長、編集局次長、正論調査室長兼論説委員などを経て、2015年6月から産経新聞社監査役。2度のワシントン勤務時代は、ホワイトハウス、国務省などを担当、米国の内政、外交など幅広く取材した。

 かつて、日中国交正常化前、中国が日米安保条約に必ずしも反対しなかったのは、この条約が存在することによって、日本が防衛費を抑制、軍事大国になることを防ぐことができると考えたからだ。“ビンのふた論”である。

 北朝鮮の核開発が深刻化した当初の1990年代はじめごろから、中国が、北朝鮮への影響力を行使して説得することへの期待感は強かった。その際の“殺し文句”として「核開発を続ければ、日本も核武装する。そうなったら、われわれにとって大きな脅威になる。それを避けるためにも中止しろ」というのが有効ではないかと考えられていた。

 中国が実際にそういう言葉を使って説得をしたかはわからないが、いずれにしても、国連の制裁に従わずに、密かに支援し続けてきた中国のいうことに、北朝鮮が耳を貸すはずがなかった。
今回、日米で再び日本の核武装論、核持ち込み論が展開されはじめたのだから、この機会を逃さず、議論を本格化すべきだろう。

議論もせず、ということでいいのか

 石破発言に対する管官房長官の発言は冷淡そのものだったが、政府の立場としては当然だ。“無役”の石破氏は立場が違う。ここは石破氏同様、自民党内で議論を活性化させるべきだ。
第1次安倍内閣時代、安倍首相とライス米国務長官が日本の核武装論議を交わした、ちょうど同じ時期、自民党政調会長だった故中川昭一氏が、非核三原則の見直し論をぶち上げ、論議を呼んだ。非核三原則のもとで、核を持たずに北朝鮮の核開発に対して、どういう対抗措置をとることができるのか考えなければならないーというのが発言の趣旨だったが、日本国内の一部政治家や反核団体から激しい非難を浴びた。

 石破氏が今回、「議論もせず、ということでいいのか」と疑問を投げかけたのは、まさに、経緯があるからだろう。

 核に関する議論は、ある種タブー視されている。それだけに、石破発言に対して自民党内でもさまざまな議論があるようだ。中川発言の時のように、ごうごうたる非難の声が出るかもしれない。

 しかし、北朝鮮の核・ミサイルに日本国民が脅威を感じ、中国は強大な軍事力を背景に、南シナ海、東シナ海で暴虐の限りを尽くしている。そうした状況を考えれば、この時期に、議論を展開するのは、国民の理解を得やすいだろう。批判があったとしても、そういう議論が正しいことを国民に対して訴えかけ、説得すべきだ。そもそも、核武装論を展開することと、実際に核を持つこととは全く別の問題なのだ。

 日本政府は、非核三原則の手前、議論するには躊躇がある。党主導で大いにアドバルーンをあげ、賛否を含めて国民の間に議論を広げるべきだろう。

 米国内ではいま、在韓米軍への戦術核再配備に関する議論が展開されている。日韓両国での活発な議論によって、今度こそ日本は真剣だと思わせ、金正恩だけでなく、中国の習近平指導部の肝を冷やしてやるのも一興だろう。

  
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