ACADEMIC ANIMAL 知的探求者たち

2010年9月21日

»著者プロフィール

ジュウシマツのラブソングにハダカデバネズミの挨拶、
人間の赤ちゃんの鳴き声、大人たちが話す言葉。
コミュニケーションの手立てである言葉の起源を探ることで、
小さな頃から追いかけてきた、こころの謎に迫る。

※前篇から読まれる方はこちら

高井ジロル(以下、●印) いま新しく取り組んでいる「情動情報」の研究とは、どんなものなのですか?

岡ノ谷一夫(以下、「――」) 情動とは言い換えれば感情です。他人とコミュニケーションするには、言葉だけでなく、心の有様を他者に伝える非言語情報(情動情報)が必要です。うれしいときは鼻歌まじりになるし、悔しいときは地団駄踏むでしょう? 感情というあやふやなものを情報として取り出し、それをコミュニケーションに使えるようにするための基礎研究をしています。全体として、コミュニケーションは、感情と言葉で成立しますよね。コミュニケーションの総合的な生物科学を進めていきたいですね。

 感情についても、これまでやってきた動物の言葉の研究と同じようなアプローチで研究できないかと思っているんです。動物の基本的な感情について調べているうちに、何か見えてくるじゃないかと。基本的な動物の感情がどう使われているかということを研究し、そして、それが言葉によってどう影響を受けているかを知りたいと思っています。

 私はずっと、言葉が心をつくっている、と思っていました。でも、どうやらそうではないですね。心はもっと原始的な感情でできていて、それに理屈付けをしているのが言葉かもしれないと、ここ10年くらいで思うようになったんです。人は言葉だけでコミュニケーションをとっているわけじゃないとようやく気づいた。言葉はコミュニケーションの一部にすぎない。生き物のコミュニケーションを理解するためには、言葉はほんの一部だな、と。コミュニケーションというものの本質的な理解、自分の意識について理解するためには、言葉だけでは足りないと感じたわけです。

関連記事

  • PR
  • 新着記事

    »もっと見る