宇宙予算の概算要求を仕分けする

宇宙戦略は、“利用”に向けた旗振りを(2)


WEDGE Infinity編集部

WEDGE REPORT

ビジネスの現場で日々発生しているファクトを、時間軸の長い視点で深く掘り下げて、日本の本質に迫る「WEDGE REPORT」。「現象の羅列」や「安易なランキング」ではなく、個別現象の根底にある流れとは何か、問題の根本はどこにあるのかを読み解きます。

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見事なリカバリ力と根性を発揮して地球に帰還したはやぶさ。米GPSとの連携で、日本の測位衛星として期待されるみちびき。次々に日本の新しい人工衛星が脚光を浴びるのは喜ばしい。だが、大切なのは打ち上げて以後、何をするか、である。
日本の宇宙戦略が、きちんと利用フェーズ創出に向かっているか。そしてその動きはきちんと予算編成に結び付いているか。今夏に行われた概算要求について専門家に話を聞いた。

 9月11日、20時すぎ。準天頂衛星みちびきが、無事打ちあがった。この衛星はGPSの補完を想定し、いわば日本の測位衛星として期待されるものである。

 たとえば、国土交通省のような航空・交通安全や測量に関わる組織が、その衛星を利用すれば、まさにインフラに貢献するものとなり得る。あるいは、民間企業がパーソナルナビゲーションやカーナビゲーションのシステムを作り、子どもの登下校の見守りや、除雪車等の運用を行い、社会安全や生活の質向上を実現する。つまり、みちびきは国のインフラとして活用できる可能性をもった衛星だが、いまだ2号機以降の見通しが立っていない。

利用創出が後手に回る日本の宇宙政策

 ある宇宙産業関係者が「日本の宇宙戦略体制には、はじめから事業・産業化を目指して利用フェーズを創出する担当主体がない」と言い切るように、日本の宇宙開発は、縦割り行政のなかでその推進母体を欠いてきた。結果、利用フェーズ以降の獲得がなかなか進まずにきた経緯がある。

 2008年には、そうした問題意識のもと、宇宙基本法に基づいて宇宙戦略本部(内閣府)が設置されたが、省庁間の連携はいまだ不十分であり、予算調整にも積極性を欠いていると言わざるを得ない。宇宙開発には膨大な費用がかかるため、担当省庁が宇宙開発の関与に早い段階から手を挙げれば、その省庁で予算を組まなくてはならない。だから、とりあえずは文科省マターで開発を行い、利用実証がうまく行けば各省庁や民間企業が手を挙げるという流れになる。本来、利用先が多くの省庁にまたがるであろう宇宙政策が、横断的に進められているとは、なかなか言いがたい状況だ。

 そのような中、菅内閣は今年6月に発表した新成長戦略において、宇宙開発を成長分野と位置づけた。首相自らが本部長を務める宇宙戦略本部による、宇宙政策推進のためのロードマップでは、「現状7兆円規模の宇宙産業を、10年後には2倍の14~15兆円に」したいとある。

 これは、7兆円のうちの約2200億円を占める宇宙機器産業(ロケットや衛星、地上局の製造業)を、現在の官需から民需に振り向けながら成長させ、残りの約6750億を占める宇宙利用産業(衛星通信や測位サービス、ナビゲーションシステムや放送チューナーなど、一般メーカーが関わる部分)を、一般メーカーの製造・利用分野拡大につなげたいということだ。

 つまり、宇宙産業分野において、国が基幹となる宇宙機器産業を拡大させ、産業振興につなげるべく努める。そのことが経済成長に追い風を起こし、結果として他国に依存することのない自在な宇宙利用能力を獲得することを目指すというものだ。

求められるべきは、利用を生み出す予算編成

 その宇宙利用能力獲得のための戦略を実現するのは国家予算であり、予算編成には政策方針が如実に表れるものだ。

 8月末日に提出された次年度の概算要求は、本当に利用に向けた編成になっているのだろうか。安全保障の観点から日本の宇宙戦略を研究する鈴木一人北海道大学公共政策大学院准教授に話を聞いた。

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