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2017年9月20日

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川手恭輔 (かわて・きょうすけ)

コンセプトデザイン・サイエンティスト

1990年代から、大手メーカーでインターネットサービスの企画・開発・運用を手がけ、自ら立案したグローバルなサービスを複数立ち上げた経験を持つ。その1つは、サービスのデザインでグッドデザイン賞を受賞した。コンピューターサイエンス関連の翻訳本も多数ある。

カメラメーカーが注目すべきこと

 Face IDやアニ文字は、ディスプレイ側にTrueDepthカメラを搭載したiPhone Xだけでサポートされますが、実はデュアルカメラ(背面)のiPhone 8 Plusでも、これまでのポートレートモードに、AIを使ったポートレートライティングという機能(ベータ版)が追加されています。それは、アップルのホームページで次のように説明されています。

デュアルカメラとAppleの設計によるイメージシグナルプロセッサを用いてシーンを認識し、深度マップを作成し、被写体を背景から分離します。さらに機械学習を用いて顔を特徴づける目印を作り、顔の輪郭に沿って照明を加えます。

 被写体の顔に焦点を合わせて背景をぼかす「自然光」、被写体の顔を明るく照らす「スタジオ照明」、ハイライトとローライトで陰影をつける「輪郭強調照明」、背景を漆黒にして被写体をスポットライトで照らす「ステージ照明」、そして「モノクロのステージ照明」の、5種類の照明を切り替えることができ、ユーザーはディスプレイのライブビューを見ながら、実際の映像で効果を確認して撮影することができます。

 背景をぼかして人物を際立たせた写真を撮ることができるポートレートモードは、デュアルカメラを搭載したiPhone 7 Plusから提供されています。それは、大型のイメージセンサーを備え、明るい望遠レンズを使用できる一眼レフカメラのユーザーの特権でした。もちろん、まだ一眼レフカメラの光学的なボケの美しさには及びませんが、ソフトウェアの進化は際限がないのではと思わされます。

 さらに今回は、ポートレート写真に重要なライティングの効果を、AIと画像処理によって擬似的に再現しました。ここで使われているAI(機械学習)の学習モデルは「顔を特徴づける目印を作る」という非常に限定的な機能です。しかし、プロの写真家が撮影した写真を学習したAIが、イメージセンサーで受光した画像をリアルタイムで認識して、最適な画像処理をするといったことも十分に考えられます。

 ボタンを押すだけで、誰もがかなりのレベル(Good enough)の写真を撮ることができるスマートフォンは、コンパクトデジタルカメラの市場を破壊しました。カメラメーカーは、逃げ込んだ高級コンパクトやミラーレス一眼などの高価格帯に籠城してなんとか持ちこたえていますが、どうやら、それも危うくなってきました。このままでは、仕事と趣味のための一眼レフカメラしか残り得ない状況になりそうです。

  
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