WEDGE REPORT

2017年9月22日

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児玉 博 (こだま・ひろし)

ジャーナリスト

1959年大分県生まれ。早稲田大学卒業。フリーランスジャーナリストとして、大手総合誌、ビジネス誌で活躍。著書に『日本株式会社の顧問弁護士 村瀬二郎の「二つの祖国」(文春新書)など。

 建設を請け負っている会社はもちろん、中国本土の建設会社である。その社名を「中国工冶」という。調べればフォーチュン誌が選ぶ「フォーチュン500」(16年度版)の290位に選ばれるコングロマリット「中国冶金科工集団」の建設部門である。このグループは、1982年、国務院冶金産業省の下で設立が認可された中国国家そのものの会社なのだ。カジノ周辺では、工事用のトラックが行き交い、中国人労働者が忙しげに立ち働いている。

カジノホテルの建設現場から宿舎への送迎車を待つ中国人労働者たち

 今年3月、「ブルームバーグ」はこんなニュースを配信した。

 ―─米連邦捜査局(FBI)の捜査官がサイパンでカジノを運営している企業の事務所に立ち入り捜査に入ったことを、サイパンの地元議員と住民らが明らかにした。地元議員、エド・プロプストによれば、「一種の捜査か家宅捜索があったようだ。地元警察と連邦当局が共同で実施しているように思えた」とコメントしている。サイパンを統括しているFBIハワイ支部のミッシェル・アーンスト報道官は、サイパンにおける司法活動についてFBIとして「今はコメントする立場にない」と述べた。カジノを運営しているインペリアル・パシフィック・インターナショナル・ホールディングス幹部はトランプ大統領が所有していたニュージャージー州アトランティックシティのカジノで経験を積んでいる─―

 地元の議会関係者によれば、建設現場で3人の墜落死亡事故が相次いだのを機に不法移民労働者の摘発が行われたという。カジノホテルの建設現場だけでも、500人超が摘発され、中国本土に強制送還されたという。

 しかし……。先の議会関係者が声をひそめる。
 「強制送還が行われておよそ3カ月。また中国人労働者が増えている。恐らくまた不法に入ってきているのだろう。当局は見て見ぬ振りをしている。サイパンの経済にとってはもはや中国人抜きでは考えられませんから……」

 サイパンでは45日まではビザ無しの渡航が可能である。09年にビザ免除措置が始まって以来、中国の経済発展と相俟って観光客は急増した。00年にサイパンを訪れた観光客はわずか1337人。それが昨年には、20万人を優に超えるにまで膨れ上がった。日本人のそれが、およそ38万人から6万人余りに激減しているのとは実に対照的だ。

写真を拡大 (出所)マリアナ政府観光局のデータを基にウェッジ作成

 サイパンの地元民の〝夢〟は行政機関で働くこと。つまり、公務員となることだそうだ。勢い建設労働者などはフィリピンなど海外の労働者に頼ってきた。中国人不法労働者が後を絶たないのには、こうした島々特有の背景も存在している。

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