WEDGE REPORT

2017年9月23日

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風樹茂 (かざき・しげる)

作家、国際コンサルタント

作家、国際コンサルタント(kazakishigeru@gmail.com)。1956年、北海道生まれ。東京外国語大学スペイン語学科卒業。メキシコ留学後、中南米の専門商社を経て、南米アマゾンの奥地でODAプロジェクトの鉄道建設にかかわる。その後は、シンクタンク、研究所勤務などで、首相向けの政策提言、ODA援助、海外投資、NGOプロジェクトに従事。イスラム開発銀行のコンサルタントも経験し、30数カ国を踏査。石油関連事業でカタール、ベネズエラに駐在。

なぜ外国人監督を選ぶのか?

2018年ロシアW杯(ArtemKovalenco/iStock)

風樹 Jリーグができてからの代表監督は、日本人は加茂 周さんと岡田武史さんだけです。なぜ日本人ではなく外国人監督なのでしょうか?

都並 ぼくの感覚からすると、指導内容、采配面とかまだまだ外国監督のほうがずっと上です。間違いなくです。ただ、日本人の特性、日本人のことは日本人が一番わかるわけですから、もうそろそろ日本人の監督に変わる時期が近付いているのではないかとは思います。

風樹 日本を撃破したコロンビアは、ぺケルマンの元で華麗なサッカーから別のサッカーになって強くなった。でも、同じスペイン語で選手は直接会話できます。通訳は忖度したり、喧嘩になるようなことは訳さなかったりすることがある。都並さんも代表のときはオフト監督の元でプレイしていたわけで、通訳がはいるとコミュニケーションに難があるのでは。その点どうでしょうか?

都並 通訳の能力によるのではないでしょうか。空気を読んで、必要なことを言って、不必要なことは割愛するとか。でも、日本人のほうがまどろっこしくてわかりにくいことが多々あります。自分のサッカーを簡潔に分かりやすく伝える言葉、方法論、練習法などは世界レベルの監督さんのほうがまだまだ上です。歴史のある国はサッカーが言語化されています。

風樹 たとえばどういうところでしょうか?

都並 攻撃でいえば、ツートップの動きについても、日本語では「1人が裏にいって1人が足元でボールを受ける、それを繰り返しなさい」と言うんですが、どの場面でそれをやるのかわかりにくい。でも、鹿島のオリヴェイラ元監督は「8の字を書くように2人で動け」と言うわけです。すると分かりやすい。これが言語化なんです。防御にしても日本で「チャレンジ・アンド・カバーをして」と言われてもよくわからない。アルゼンチンに行ったときにびっくりしたけど、ディフェンスのブロックは、メディアルナ(=半月)の形、クロワッサンの形を作りなさいって言うんです。「おー、そういうことか、なるほど」って分かるわけです。アルゼンチンでは子供でも知っています。これが歴史の深さです。

風樹 サッカーはプロになってから25年ほどですから、先輩の野球、あるいは伝統ある相撲、柔道、空手(日本文化の神髄は一対一の対決だ!)などとは違うのかもしれませんね。

都並 今治FCのオーナーになった岡田武史さんが「岡田メッソド」というのを作っているところです。日本にはまだサッカーのメソッドがない。プレイモデルがない。だから指導がばらばらになってくる。そこが外人と日本人の違い。

友森(「WEDGE Infinity」編集長) JFAや代表に日本の目指すサッカー像ってあるんですか?

都並 いや、まだないようです。いろんな勉強をしている段階で、あるときはスペインサッカー、あるときはメキシコサッカー、あるときはフランス。技術委員が変われば全部変わってしまう。それだと、強くなれない。

守備文化はないのか

風樹 野球でいえば、野村監督は1対0で勝つ試合が理想だとおっしゃっていましたが、サッカーでも守備こそが大事と思うけど、マスメディアで持て囃されるのはやっぱり点を入れた場面です。たとえば、ブラジル大会では練習試合で3対1で日本に敗れたコスタリカは、ウルグアイ、イングランド、イタリアのいる死のグループを1位抜けして、ギリシアに勝ってベスト8まで進出しています(筆者がスタジアムで見たオランダ戦で0対0延長後、PK戦で敗北)。名キーパーのケイロル・ナバス(現リアル・マドリッド)がいたからだと思いますが、日本でもこうやって点を防いだとか、そういう防御が脚光を浴びるにはどうすればいいのでしょうか?

都並 粘り強く守って楽しいというのもあるんですが、そういう守りの文化は簡単には日本では見つからない。

風樹 「おしん」みたいな、耐えて耐えて勝つようなのも日本にはありますが。

都並 心理的にはありますね。ぼくもそれほど歴史を知るわけではありませんけど、戦争などで何度も攻められた国は、まず守備からはいっていくというメンタリティがあるのではないでしょうか。

風樹 国民の半数が戦争で玉砕したパラグアイ(参照「憲法改正を押しとどめたパラグアイ国民の意外な方法」)がまさにそうで、フランス大会では決勝トーナメント1回戦で徹底的な守備戦術で、延長までもつれてフランスを苦しめました。でも、イタリアが引いて守れば伝統のカテナチオといわれるけど、日本やイランなどが守備的にやると弱者のサッカーなんていわれる、おかしいですよ。

都並 弱者ということはないと思います。勝つための戦法ですから。でも、今の日本がかつてのパラグアイのように引いて引いて守っても、やられるだけになってしまう可能性があります。

開催地に合わせたサッカーはできないのか

風樹 ワールドカップでいえば、開催地によって随分気候なども違う。ブラジルだったら暑くて、広くて各スタジアムは離れている。ロシアはさほど暑くないし、今回はヨーロッパ側にスタジアムが集中してブラジルのときほどは離れていない。次の次のカタールは冬季開催となった模様ですが、ともかく暑い(筆者はワールドカップのための電力供給プラントに一時従事)。暑いと不可能なサッカースタイルもありますね。開催地に合わせたサッカーとかってできないものでしょうか?

都並 それぞれ柔軟に対応できるのが理想だけど、現実それが足りないのが日本のサッカーです。監督がうんぬんというよりも気候や環境にあわせて、個人も組織も柔軟に対応できればいいのですが。それができるようになるには、子供のうちからの育成にすべてかかっています。たとえば人工芝のグランドだけでやっていたら、小学校の芝のグランドではうまくできないとか。アルゼンチンではあえてぬかるみでやる、イタリアでは泥だらけのところを走らせる、スペインでは土のグランドで練習する。わざとそういうこともやらせています。逆にぼくは古い選手だから環境が悪くてもできるということがあった。今はちょっと過保護で、それを取り戻すところなのかな。これも歴史です。

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