WEDGE REPORT

2017年9月25日

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シリアに最大の聖域

 米国はこうした分派に対して無人機攻撃などを続けてきたが、ここにきてシリア北西部のイドリブ県に「米同時多発テロ(9・11)以来、アルカイダの最大の聖域ができつつある」(米高官)状況になった。その主役は過激派組織「レバント解放委員会」だ。

 同組織はアルカイダ系の分派「ヌスラ戦線」だったが、昨年、組織名を改称し、アルカイダとの関係断絶を表明した。だが、米国はこれについて、米軍の空爆を逃れるための“偽装離婚”と断じ、警戒を強めてきた。同組織には、アフガンなど各地のアルカイダ戦闘員が結集し、今やその勢力は1万人にも膨れ上がっているとされる。過激派界の“新スター”とされるビンラディンの息子もこの中に潜伏している可能性がある。

 同組織はシリアの内戦で反体制派に加担し、アサド政権軍やそれを支援するレバノンの武装組織ヒズボラと戦闘を重ね、反体制派では最強の軍事組織にのし上がった。現在はトルコと国境を接するイドリブ県をほぼ支配するまでになり、アサド政府軍と対峙している。

 アサド政権は激戦が予想される「レバント解放委員会」との戦闘を後回しにし、まずは東方でのIS壊滅に全力を挙げる方針だが、IS壊滅後には同組織との決戦は必至。しかし、ISのように大きな拠点を構えることなく、ゲリラ戦を得意とする「レバント解放委員会」の一掃は困難で、より広大な地域に戦線が拡大する公算が強い。

 トランプ政権はこうした混沌とした状況に対応するためにも、過激派の「標的殺害」の新方針策定を急いだと見られている。だが、最近、「レバント解放委員会」と連携を組む過激派組織がシリア軍支配下の村々に攻撃を仕掛けるなど政権軍との衝突が激化しており、トランプ政権はISに次いでアルカイダにも手を焼くことになりそうだ。
 

  
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