坂本幸雄の漂流ものづくり大国の治し方

2017年9月29日

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久夛良木:そうですね。技術者として、自由に未来へ向かって夢を形にしていける環境があった。PSの開発を手掛ける数年前の1980年代半ば、ソニーの研究所で放送局用に開発した三次元映像エフェクター「システムG」と出会い、瞬時に画像を変形させるデモを見て衝撃を受けた。

 

 当時は高価な専用コンピュータシステムでさえ、リアルタイムで三次元画像を生成することは困難な時代。一方でハリウッドを中心に、今まで見たことのないCG作品が生まれ始めていた。いつの日か、こんな技術が家庭用ゲーム機として世界中の家庭にやってくるだろうという妄想がPS開発の発端となった。

 開発がスタートして間もない頃、ソニーの技術者から、「東芝から面白いグラフイックスチップの売り込みがあったが、そちらで興味はある?」という話があり、東芝半導体部門の研究員だった大橋正秀さんと会った。

 今なら法務部を通さず会社の違う技術者同士が勝手にビジネスの話を進めることは難しいだろうが、当時は、国内外の学会などでは技術者同士が互いに白熱した議論を交わすことも多く、俄然話が盛り上がった。ソニー、東芝両社の最先端技術を持ち寄って、画期的なコンピュータグラフィックスエンジンを開発しようという機運が芽生えた。会社の枠組みや担当者の権限などというしがらみを超え、技術者同士が互いの夢を出し合い、未来を一気に引き寄せた。今で言うオープンイノベーションのはしりだった。

坂本:日本では、今でも垂直統合、自前主義から脱却できてない企業が多い。ノウハウを外に出さず、自社内でブラックボックス化するようでは、もう世界に通用しない。

久夛良木:その通りだ。AI技術がここまで急速に発展したのも、元トロント大学のジェフリー・ヒントン教授を始め、研究者がディープラーニング(深層学習)の最新のアーキテクチャやフレームワークをどんどんオープンにすることで、世界規模でイノベーションが急加速したことが大きい。この流れは、フィンテックや自動運転技術など、今や様々な分野で起きている。

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