使えない上司・使えない部下

2017年10月11日

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吉田典史 (よしだ・のりふみ)

ジャーナリスト・記者・ライター

ジャーナリスト。1967年、岐阜県大垣市生まれ。2006 年から、フリー。
主に、人事・労務分野で取材・執筆・編集を続ける。『悶える職場』(光文社)、
震災死』『あの日、「負け組社員」になった…―他人事ではない“会社の落とし穴”の避け方・埋め方・逃れ方』(ダイヤモンド社)『封印された震災死』(世界文化社)など。

神田森莉さん

 出会い? それ以前に、アングラに近いレディース雑誌で描いていたの。編集長はそれを見て、「神田という漫画家を俺の雑誌で使いたい」と編集部に連絡をしてきたらしい。それで強引に引き抜いたの。そして、彼が仕切る雑誌で描かせてくれた。このあたりからして、すごいでしょう? 10年のうち、特に前半の5年間が精神的に苦しかった。追い詰められていたから。ダメ出しの連続よ。皮肉なことに、このときが振り返ると、もっとも伸びた時期で、もっともヒットした時代だった。あの編集長は、すごい。怖いけど。あまりにもしつこいし、言葉がきついから、ノイローゼになる。胃潰瘍になるよ。不整脈の日々だった。

 10年間、つきあいがあったけど、俺の作品が雑誌の読者アンケートでランキングがしだいに低くなった。それを機に縁がなくなった。その後、あんなに厳しい編集者とめぐり合うことはなかった。だから、売れなくなったのかな…(苦笑)。楽をして、売れるわけないよね。

部下を稼ぐことができるように、鬼になっても育てあげないと…

 あの編集長は今、70歳を超えているのか…。会いたくはないけど、思い起こすことはある。打ち合わせのときも、仕事以外の会話をしないんだな。酒なんて、飲んだことはない。

 仕事のことしか、頭にはないから。いつも怖いほどに教え込まれた。カネを出すに値する作品やプロの漫画家ってどうあるべきなのか、を。「使える編集者」はカネになる勘所をつかみ、それを漫画家や作家に教えこんでいくことができるんだろうね。

 才能がない人は、その厳しさに我慢ができなくなり、消えていく。俺も、そのひとりだけど。これに近いことは、会社員にも言えるじゃないかな。厳しい上司のもと、仕事で結果を出して認められ、上がっていく会社員ってすごい。

 時々、パワハラ上司のことを新聞やテレビで見るでしょう。部下の心理がなんとなくわかる。こういう上司は意味もなく、厳しく叱っているんじゃないかな。それならば、「使えない上司」だよ。「使える上司」ならば、部下を稼ぐことができるように、鬼になっても育てあげないと…。伸ばしていかないと…。その思いは、部下にも伝わると思う。

 俺も、合計30人ぐらいのアシスタントがいた。5人ほどが、プロになった。俺よりもはるかに才能がある。画力も、アイデアもすばらしい。5人は、時間にあわせて作業の速さを変えることができた。自分は今、何をするべきか。このあたりが、きちんと見えている。俺としては、こうしてほしいと言わなくていい。楽なんだ。「使えない上司」だったのかな…。

  
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