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2017年10月2日

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ハリケーン「マリア」で全島停電の甚大な被害を受けた米自治領プエルトリコの被災地支援をめぐり、最大都市サンフアンの市長が連邦政府の対応の遅れを非難したところ、ドナルド・トランプ米大統領が「なんでも人にやってもらいたがる」などとツイートして反発した。

人口約350万人の島プエルトリコは9月20日、最大級のハリケーン「マリア」に直撃され、16人が死亡。数百万人が電気や飲料水、食料、医薬品、通信手段のない状態に陥った。

米国防総省は28日、人口の半数が飲料水がない状態だと明らかにした。米緊急事態管理庁(FEMA)によると、島の95%が停電状態で、住民の55%が飲料水のない状態だが、ガソリンスタンドのほとんどは再開したという。

自治政府所在地サンフアンのカルメン・ユリン・クルス市長は29日、「もう我慢している時間がない」と記者会見で強調。「アメリカ合衆国の大統領に、人命救助の任務の責任者を誰かしっかり任命してほしいとお願いする」、「お行儀よくするのはもうおしまい。ポリティカリー・コレクトな態度ももうおしまい。私は激怒している」など、疲労と怒りをあらわにした。

市長は会見後、「助けて、死人が出ているんです」と書いたTシャツを着て、CNNのインタビューに出演。自分も自宅を破壊されて避難所で生活している市長は、「マリア」で島内の民家の9割が損害を受け、今後6~8カ月は電力復旧の見通したが立たないと述べた。

28日には米国土安全保障省のエレイン・デューク長官代行がホワイトハウス前で記者団に対して、被災地支援の進捗に「とても満足している」と述べ、「(被災した)人たちにたどりつく能力という意味で、非常に良いニュースの話題だ(a very good news story)」と発言した。

これに対してクルス市長はCNNに対して、「良いニュースの話題だなんてとんでもない。大勢が死んでいるという話題なのに」と強い調子で反発。「(長官代行が)立っているあの場所からは、良いニュースの話題なのかもしれないけれども、小川の水を飲んでいる人間にとっては、良いニュースの話題なんかじゃない。赤ちゃんの食べ物がないのに、良いニュースの話題なんかじゃない」と反論した。

30日朝には、今度はトランプ大統領が市長を非難するツイートを連投。

「ほんの何日か前はこちらをとてもほめていたサンフアン市長が、トランプの悪口を言えと民主党に指示された」と書いたほか、「サンフアン市長やプエルトリコのほかの連中の指導力が本当にひどい。自前の労働力の支援を得られないんだ。住民同士で団結してやらきゃならないのに、なんでもかんでも人にやってもらいたがる。今では連邦政府職員1万人が島に着いて、素晴らしい働きをしている」とツイートした。

トランプ氏はその上で、メラニア夫人を伴い3日にはプエルトリコを訪れるとあらためて表明。さらに、「プエルトリコの人たち、フェイクニュースを信じないで!」とツイートした

米軍によるプエルトリコ被災地支援を束ねるジェフリー・ブキャナン中将は29日、プエルトリコの予備兵を含め米兵約4500人が、支援活動に当たっていると述べた。また国防総省によると、病院船を派遣し、電力送電設備の復旧のために工兵部隊を派遣したという。

国際支援団体などが援助物資を被災地に届ける妨げとなっていた1920年のジョーンズ法(米国の港湾間の物資輸送は米国製の米国船籍に限定)についても、批判の高まりを受けて、トランプ政権は28日に10日間の効力停止を発表した。

28日には、サンフアンの港に大量の支援物資を積んだコンテナが並んでいるものの、燃料不足や道路の遮断などのため運搬して配布する手段がないと指摘された。

トランプ政権の対応の遅れや、プエルトリコの惨状に関するトランプ氏自身の発言は、広く批判されている。

大統領の一連のツイートについて尋ねられたクルス市長は、「私は助けを求めたんです。大統領の悪口など何も言っていない」と反論した。

「私は今後も言わなきゃならないことを言い続けて、ほめるべき人たちを褒め続けて、批判すべき人たちを批判します」

「これは私の話じゃない。これは誰か特定の人の話じゃない。これは、死人が出ているという話なんです」

プエルトリコは米国の自治領だが、住民は国政選挙への直接参政権を持たない。


<現場から> もっと切迫した問題がある――アリーム・マクブール、BBCニュースプエルトリコ

私たちはサンフアンのすぐ東にあるロイサで、仮設避難所になった学校を訪れた。

そこの人たちは、ドナルド・トランプとサンフアン市長が言い争っているなど、何も知らなかった。そもそも電話は通じないし、インターネットもなければテレビもなく、そんなことよりもっと切迫した問題に直面していたから。

多くの人が家を失い、ハリケーン「マリア」直撃前になんとかかき集めた所持品のほかは、何もかも失っていた。

寝るためのマットレスがやっと配られたのは、ハリケーン直撃から実に9日後のことだったと、避難所の人たちは話した。それまでは教室のコンクリートむきだしの床で眠っていたそうだ。

FEMAの担当者がついにやってきたのは、「マリア」直撃から10日たってからだったという。

この人たちはそれでも、サンフアンの近くにいる。まだ支援が届かない、遠隔地の人たちへの懸念が募っている。


(英語記事 Puerto Rico: Trump lashes out at San Juan mayor over Maria response

提供元:http://www.bbc.com/japanese/41465573

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