赤坂英一の野球丸

2017年10月4日

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「点滴を受けながら続けていました」

 落合監督は、三塁をやりたい森野の希望を知らなかったわけではない。現に沖縄・北谷キャンプでは連日、三塁の守備位置で自ら猛ノックを浴びせている。今時スポ根漫画でもお目にかかれないスパルタ式の練習で、森野がフラフラになると「おまえの代わりなんかいくらでもいるんだ!」「嫌になったら今夜の飛行機で名古屋へ帰れ!」と罵倒。あまりの厳しさ、激しさに森野が失神すると、ポリバケツで水を浴びせてなおもノックを続けている。来る日も来る日もそれだけ散々な目に遭わされてなお、「点滴を受けながら続けていました」と言うのだから恐れ入る。

 文字通り、血の滲むような苦労を経て森野が三塁で開幕スタメンに名を連ねたのは、実に13年目の09年だった。ナゴヤドームで「3番、サード、森野」とアナウンスされたときは、「ああ、やっとここまできたか」という感慨と喜びがこみ上げたという。「それまでの苦労が報われた感じがしました。スタメンで名前を呼ばれて、こんなふうに感じるプロ野球選手はなかなかいないんじゃないでしょうか」という森野の言葉には、守備位置を固定されたスター選手とは違う重みが感じられた。

 来年から、二軍の打撃コーチとして第二の人生をスタートさせる森野。球界でも類例のない苦労人だった彼が、今度は指導者としてどのような選手を育てるのか、楽しみにして見守りたいと思う。

  
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