2024年4月20日(土)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2010年9月29日

 しかし今回は、中国の主張によれば「彼らの国家主権にかかわる問題」である。しかも北京五輪の成功と世界金融危機後の経済成長の継続により、中国は「自信」をいたずらに深めている。したがって、なりふり構わない日本への圧力を今後強めこそすれ減らすことはないだろう。2008年のチベット問題に関連してサルコジ大統領が中国批判を繰り返したところ、単にカルフールでの不買運動が盛り上がっただけでなく、中国政府は地下鉄建設をはじめ様々な大型インフラ関連の入札からフランス企業を閉め出すなどの制裁をとったことは記憶に新しい。そこでフランス経済界は恐懼し、ついにサルコジを動かして「中国のチベットにおける主権を尊重する」と言わしめた。

 フランスは領土を中国と接していないのでこの程度で済んだのかも知れないが、日中関係は今後領土をめぐる中国からの圧力で繰り返し紛糾し、中国側の妥協なき強圧的措置で日本企業の経済活動や貿易が苦境に立つ機会が間違いなく増えることだろう。もしそうならないとすれば、「戦略的互恵関係」が中国の圧力と日本の服従という構図の下で推移させられるときのみであると思われる。

 これは、「大東亜共栄圏」における日本帝国と中華民国の関係と近似である。
我々は、領土、そして経済を引き合いに譲歩と服従を迫る中国の、実質的に帝国主義国家に近似した態度に対して見て見ぬふりをするべきなのだろうか? 

時代はふたたび
「政冷経冷」「日中冷戦」へ

 中国政府は27日現在、船長の逮捕に関する「謝罪と賠償」要求について、「我々には権利がある」とトーンダウンさせ、「戦略互恵関係の回復」を前面に出した。『環球時報』を除く主要紙のWebサイトからもこの問題に関する記事が激減した。日本・国際社会からの強い反発に遭遇し、しかし国内の強硬論にも一定の配慮を強いられる中国政府は、収めどころを模索するのに苦慮しているかに見える。日本としても必要以上に事を荒立てるのは得策ではなく、双方の面子を完全に潰さない範囲での応酬と裏での収拾が図られることになるのだろうか。


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