世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2017年11月3日

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 風刺風に書かれた論評です。筆者はボリス・ジョンソンに共感を覚えるところがあるようでもありますが、良く判りません。しかし、ジョンソンの最近の言動の動機について筆者が書いていることは恐らく正しいのだと思います。それは、離脱に決した以上、早期に綺麗さっぱりと決別すべきであり、ぐずぐずしていると、邪魔が入って離脱出来なくなるということです。

 ジョンソンはメイ首相に反旗を翻しました。この論評が言及している4つのレッドラインは、9月29日のThe Sunとのインタビューでジョンソンが語っていたことで、次の4条件を指します。

 (1)移行期間は最大2年とし、一秒たりとも超えてはならない。

 (2)移行期間中はEUの新規則と欧州司法裁判所の新たな判決は受け入れない。

 (3)移行期間後は、単一市場へのアクセスのために支払いをすることはない。

 (4)単一市場へのアクセスのためにEUと同じルールを採用することはしない。

 これらの条件はメイのフィレンツェ演説とは相容れません。メイは約2年の移行期間といっていますが、ハモンド財務相は3年程度の移行期間を欲しているといわれます。メイが意図する移行期間は現状維持であり、現状維持とは現在の構造を認めるという意味であり、EUの新たな規則と欧州司法裁判所の新たな判決は当然認められなければならない筈です。メイは2020年までのEU予算の英国負担分の支払いに応ずることを表明するとともに、「英国は加盟国であった間に成したコミットメントを順守する」と述べましたが、ジョンソンのいっていることは、その他の清算金の支払いには一切応じないということであり、これだけで交渉を破壊するに充分です。

 これに先立ち、ジョンソンは9月15日のテレグラフ紙にハードな離脱を主張する長文の寄稿を行いました。9月27日にはマイケル・ゴーブ(環境相)、リアム・フォックス(国際貿易相)というEUとの完全離婚派と共にInstitute for Free Tradeというシンク・タンクを立ち上げ、その発足式を外務省で行いました。

 フィレンツェ演説はEUとの関係では一定の効果を持ったようですが、他方で保守党内の分裂を癒すには至っていません。それどころか、ジョンソンの言動によって、その分裂は一層露わになっている印象です。ジョンソンを野に放っておけばより危険だったかも知れませんが、閣内にジョンソンを抱え、閣内不一致のままでEUとの交渉を続け得るようには思われません。メイはジョンソンを罷免して当然です。政治的に弱い立場のメイにそれが出来ないのであれば、メイは早晩辞任せざるを得ないでしょう。そうなれば、少なくとも暫くの間、交渉は停滞し、崖から転落する危険は甚だしく大きくなります。それでもジョンソンには何ら不都合はないということでしょう。

  
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