ビジネススキルを活かして楽しむ脱力系子育てのススメ

2017年10月27日

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小川大介 (おがわ・だいすけ)

1973年生まれ。京都大学法学部卒業。学生時代から大学受験予備校、大手進学塾で受験国語の看板講師として活躍。難関中学、国公立大学医学部などへ多数の合格者を送り出す。2000年、さらなる学習指導の理想を追求し、中学受験専門のプロ個別指導教室SS-1を設立。教科指導スキルに、声かけメソッド、逆算思考、習慣化指導を組み合わせ、短期間の成績向上を実現する独自ノウハウを確立する。著書に『小川式[声かけ]メソッド』(宝島社)、『中学受験 基本のキ!』(共著:日経BP社)、『頭がいい子の家のリビングには必ず「辞書」「地図」「図鑑」がある』(すばる舎)、『論理力は小学6年間の国語で強くなる』(かんき出版)など。今年10歳になる男の子の父。

人を伸ばす「観察の4つのコツ」

 観察の目が曇らないように以上の注意を念頭に置きつつ、人を伸ばす観察のコツを見ていきましょう。

 まず1つ目は、「得意を見つける」ことです。

 できていないところを見つけて直す。

 できているところを見つけて伸ばす。

 人を伸ばすにはどちらも必要です。ただ、成果が早く出るのは圧倒的に後者のアプローチです。すでに出来ている力を使って、もっと成果を上げていく方が本人もすぐにできるからです。

 相手の得意を見つけて伸ばすのが上手な人は、本人が楽しそうにしている様子、楽々こなしているところに目を向けます。

 人を育てようとすると、ほとんどの人が本人が出来ていないところを見つけようとしてしまうのですが、逆なんですね。出来ているところを観察するのです。

 2つ目は、「直観を大切にする」ことです。

 今まで距離を感じていた人になんとなく近づけた感じがした瞬間、あるいはふと好感をいだいた瞬間はないでしょうか。

 「あ、もしかしていい人かも」とか、「なんだ、こんな一面があるんだ」といった感じ方の時です。

 そんな瞬間に、相手の過去と現在とを分析して、自分はこの人といかに付き合っていくのがよいだろうかといくつかの選択肢を考え、決断していく、なんてことしませんよね。

 理由は分からないけれど、ふと自分の気持ちが変わるといった感覚だと思います。ごく自然な直観的な受け入れです。

 相手を観察するとは、目で見るだけではありません。聞こえる言葉の調子、体に伝わってくる息づかいや雰囲気といったものも含め、「全身で見ている」のです。

 しかし、相手とのこれまでのやり取りなどの過去情報が蓄積されて、先入観がこりかたまってしまっていると、直観の働きがにぶってしまいます。瞬間的にうかんだ自然な受け入れができなくなってしまいます。「感じているのに見えていない」状態です。

 ですから、教え育てるために観察する時には、「そんな気がする」という直観の力も大切にしていただきたいのです。

相手に好奇心を持ち、相手を信じる

 3つ目は「変化に気づける自分でいる」ことです。

 相手のちょっとした変化に気づけることで、関わりのチャンスが生まれます。昨日と違っているところ、同じことをしていても先週とは表情や雰囲気がちょっと違うなというところに、気づける人は育て上手です。

 人が育つには、本人自身が具体的な目標を持っていること、また「そうなりたい」という気持ちを持っていることは大きな武器になります。そして変化しているということは、本人自身が変わろうとしていることであり、変化した分だけ「変わることができた」ということです。変わるだけの力を本人が持っていて、変わるだけの行動や意識を働かせることができたということです。

 ということは、ごくわずかな変化に気づける人は、相手の変わっていく力を早い段階で見つけ出し、その力を使えるように応援できる人なのです。

 では変化に気づける自分でいるためには、どうすればいいでしょうか。

 ポイントは、「相手に好奇心を持つ」ことです。わずかな表情の変化、声の調子、しぐさ、目の動き、顔色のわずかな変化など、人と人との間には言葉にならない情報が様々な形で発信されているのですが、人はそういった情報をキャッチする力を生まれながらに持っています。しかし自分の都合や感情だけに気持ちが向いて、相手に向けてアンテナが働いていないと、言葉以外の膨大な情報をキャッチできなくなってしまいます。

 ですから好奇心を相手に向けるのです。それだけで、流れ込んでくる情報量が変わり、より良い観察ができるようになります。

 そして4つ目が「相手を信じる」ことです。

 成長していく力、問題を解決していく力はすでに本人が持っていると信じた上で、自分に何ができそうか、何を助ければいいかという目で相手を見つめ直してみるのです。

 昔、コーチングの師匠がクレーム対応のコツを教えてくれたことがあります。

 クレームの電話に出る時、折り返しのお電話を差し上げる時は、その前に、

 「今から電話をかけるお客様は、いまの問題を解決する力をお持ちで、きっとその力を私に貸してくださる。」と3回唱えるのです。

 クレームをつけてきた方に対して、不信感や不安感を持ったまま対応しようとすれば、相手からの攻撃にどう耐えるか、どうかわすかという気持ちになります。

 しかし相手の方は問題を解決する力を持っている、自分に協力してくださるという意識で臨むと、いま本当に問題になっていることは何で、何が実現できればお客様は安心してくださるのかを知ろう、聞こうとすることができます。

 観察の仕方が変わるのです。

 同様に、人を育てる時にも「この人には育つ力があるんだ」と信じて観察するようにすれば、これまで気づかなかった長所を発見できるようになるのです。

 以上のようにより良い「観察」を心掛けることで、お子さんを育てるにも、部下を伸ばすにも、何を手助けし、何を引き出してあげれば良いのかがより早く、的確に見つけられるようになるでしょう。忙しい毎日で限られた時間しか持てないとしても、ポイントを踏まえた関わりができれば人は伸びていきます。

 観察の力をぜひ磨き、活用していってください。

 次回は、「問題解決を引き寄せる相談の受け方」についてお話ししたいと思います。

 

 

 

  
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