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2017年10月27日

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田中淳夫 (たなか・あつお)

ジャーナリスト

静岡大学農学部卒業。出版社、新聞社を経て、主に林業を中心に取材・執筆。著書に『森と日本人の1500年』(平凡社新書)、『森は怪しいワンダーランド』(新泉社)など多数。

有害動物駆除のプロが必要?

 野生鳥獣の増加に歯止めをかけるのが狩猟者だろう。狩猟免許所持者数は、1990年が29万人、14年は19・4万人と急減していた。これが問題とする声は強い。

 ところが有害駆除数の推移を見ると意外な点が浮かんだ。駆除数を90年と14年の比較で示すと、シカは4万2000頭から58万8000頭、イノシシが7万200頭から52万600頭へと急増している。狩猟者数と有害駆除数は必ずしも相関しないのだ。

左:(出所)環境省、右:(出所)農林水産省 写真を拡大

 その背景には報償金の値上げがある。有害駆除を行うと支払われる報償金額は自治体によって違うが、以前は1頭5000円程度だった。それが地域によって2万~3万円まで上がっている。これまでボランティアに近かった駆除も、頑張りがいが出たのだろう。

 ならばもっと狩猟者が増え、報償金も上げたら獣害も収まるかも……。しかし、それほど単純ではないという。

 「狩猟免許を取る人は増えました。ただ免許を持っていても、それが獣害対策に結びつくとは限りません」と語るのは、兵庫県丹波市にある株式会社野生鳥獣対策連携センターの上田剛平さん。獣害対策の指導や野生動物管理計画作成に携わるとともに、有害獣駆除を行っている。

狩猟免許の取得者は増えているものの……
(写真・野生鳥獣対策連携センター)

 「有害獣駆除の担い手は猟友会が中心ですが、新人を教育する機能がないため腕前に差があります。年間1頭も獲らない人もいますよ。また猟友会ごとに行動エリアをある程度決めているので、広域に出動するのは難しいのです。それに被害の多い農地周辺より獲りやすい山間部に行きがちです」

 猟友会は基本的に狩猟の愛好家団体だから無理はできない。やはり有害駆除を担う専門のプロが必要ではないかと提案する。防護柵も、個別の農地を囲う柵と集落全体を囲う柵は役割が違う。張り方を誤ると効果が出ないし、柵は破れることもある。また、電気柵は草が伸びて接触すると漏電する。メンテナンスを誰が担うか、受益者と行政の関わり方を整理して実行するのが肝心だという。

 ともあれ駆除が追いつかない勢いで増加しているのは間違いない。生息数を半減させるという環境省の目標を達成するには、捕獲数を現在の2倍に上げても困難だろう。分布域も拡大の一途だ。

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