WEDGE REPORT

2017年10月27日

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田中淳夫 (たなか・あつお)

ジャーナリスト

静岡大学農学部卒業。出版社、新聞社を経て、主に林業を中心に取材・執筆。著書に『森と日本人の1500年』(平凡社新書)、『森は怪しいワンダーランド』(新泉社)など多数。

獣害に特効薬なし
地域に合わせた対策を

 原生林の広がる奈良県の大台ヶ原は、1959年の伊勢湾台風で樹木が倒れた後に草原ができた。そこにシカが大繁殖して樹皮を食べるため森林が衰退してしまった。03年のシカ密度は1平方キロメートル当たり41・6頭。適正密度の十数倍だ。

 「そこで密度を5頭まで落とす目標を立てました。くくり罠で捕獲するほか、防護柵によって約70ヘクタールを囲みました」(環境省吉野自然保護官事務所の菅野康祐さん)。

 16年度の密度は5・9頭になり、柵の内側では植生が回復しつつある。

 厳島神社のある広島県の宮島もシカが多い。島内に農家は少なく被害はないが、観光客が与える紙やスナック菓子の影響でシカが死んだり、ごみ箱を漁るようになった。シカ角による怪我人も出る。ただ神域だけに駆除することはせず、市街地からシカを追い払うことにしたという。

 「餌やりを禁止し、ゴミ箱に蓋を付けました。徐々に市街地への出没は減っています」(廿日市市宮島支所の松本浩二環境産業建設担当課長)

 野生動物の生態を知り、地域の特性に合わせた対策を地道に積み上げていく……獣害に特効薬はないのだ。

  
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◆Wedge2017年10月号より

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