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2017年10月29日

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樫山幸夫 (かしやま・ゆきお)

産經新聞前論説委員長

産經新聞前論説委員長。政治部で中曽根首相番、竹下幹事長番、霞クラブ(外務省)詰め、ワシントン特派員、同支局長、外信部次長、編集局次長、正論調査室長兼論説委員などを経て、2015年6月から産経新聞社監査役。2度のワシントン勤務時代は、ホワイトハウス、国務省などを担当、米国の内政、外交など幅広く取材した。

 「強者どもの夢の後」、「戦い済んで日が暮れて」-。今の永田町の雰囲気はまさにこれだろう。新旧議員の引っ越しは真っ最中、特別国会召集に向けて早くも各党の駆け引きが始まっている。「希望の党」結成、民進党の分裂という大きな動きがあったものの、ふたを開けてみれば、与党の圧勝。いささか興趣に欠ける展開となったが、選挙の常で悲喜こもごものドラマが今度も展開された。独断と偏見による「損得番付」を〝編成〟、今回の選挙を振り返ってみたい。

(Mari05/iStock)

 「得」の東正横綱はもちろん、安倍首相その人。

 野党は「大義なき解散」と批判した。たしかに、首相の説明は明快さを欠いた。「消費税引き上げ分の使途を変更するので国民の信を問いたい」といわれても、唐突の政策変更に、「さあ、審判を」では戸惑ってしまう。 開票日、大勢が判明した後、首相は終始硬い表情を崩さなかった。大勝に謙虚、という態度を示したかったのだろうが、その胸中には、ある種の「畏れ」がなかったか。森友・加計問題での支持率低下など逆風の中での選挙にもかかわらず、この大勝。しかも来年の総裁選での3選、憲政史上最長の首相在任―が現実味を帯びてきたのだから、当然だろう。第2次政権発足以来、国政選挙は勝ち続けてきたのも、強運というほかはない。

 むしろ、正直に説明した方がよかった。「前回の総選挙から3年近く。第2次政権発足から5年近く経過しており、アベノミクスも成果をあげたが、それも道半ば。私に対する批判もある。ここで国民の信を問うて、政策を前進させていきたい」とでも説明していれば、すっきりしたろう。

 野党がやはり攻撃した臨時国会の冒頭解散にしてもそうだった。代表質問の論戦を行って、与野党の対立を鮮明にし、最後の答弁で首相が、「さあ、国民の審判を仰ぎましょう」と呼びかける。その瞬間に、議長席の後ろの扉が開いて解散詔書が届けられ、“万歳”という展開だったら、舞台装置も整って、ムードもさらに盛り上がった。 

 開票翌々日の24日の閣議では各閣僚とも「謙虚」という言葉を口にしたが、国会答弁など聞いている限り、首相は時に謙虚さが欠け、傲慢と映ることもある。

 第4次内閣では憲法改正という重要な課題が待っている。「自民党は好きだが安倍首相はどうも…」という有権者が増えているとき、心してそういう重要任務に取り組んでほしい。

 西の横綱はなんと言ってもこの人だ。

 「希望の党」から排除され、窮余の策として急ごしらえの党で戦った結果がこうなのだから、笑いが止まらないだろう。比例での得票は1100万票を超えたというから、目を見張るばかりだ。

 旧日本社会党を支持していた比較的年齢の高い層から一定の票が得られるとは予想されていたが、ここまで、議席を伸ばすとは。野党第一党として、今後どう与党と対峙していくのか。かつての社会党のような対決一辺倒ではこの時代、幅広い有権者の支持を得られまい。

 枝野氏は、政治家としての見識も高く、柔軟な発想ができ、指導者としてのカリスマ性も持っているようだ。しかし、支持層拡大のためにリベラル色を薄めたりすると、今回支持した人たちが離れていきかねない。かつての社会党が政権について政策を転換したことが衰退の原因になったように。そうなれば、立憲民主党は今回の選挙だけの徒花で終わってしまうことになりかねない。浮かれてばかりはいられないだろう。

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