チャイナ・ウォッチャーの視点

2017年10月31日

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西本紫乃 (にしもと・しの)

北海道大学大学院公共政策学連携研究部付属公共政策学研究センター研究員

1972年広島県生まれ、広島大学大学院博士後期課程単位満了退学、元外務省専門調査員(在中国日本国大使館)。著書『モノ言う中国人』(集英社新書、2011年)。

 中国の5年に一度の政治のビックイベントである党大会が24日に閉幕した。翌25日に開催された党の重要会議の一中全会で新しい党指導者の人事が発表され、中国共産党の中国の政治は新たな5年間がスタートした。

 今回の党大会では党規約に習近平主席の名前を冠した新たな政治思想あるいは指針が盛り込まれるか、また、最高意思決定を担う新指導部7人やその下部の政治局委員に習近平主席の息のかかった人材がどのくらい登用されるか最も注目された。つまり習近平主席個人への権力の集中や権威付けがどのくらい進むのかという点が第19回党大会の最大のポイントだった。

(写真:AP/アフロ)

 第十九回党大会の開幕日の18日には3時間20分にわたる習近平主席の「報告」は、テレビ中継が放送され、全国の様々な職場単位で党組織の指導のもと多くの人が一斉に視聴した。なかでも、幼稚園の園児にまで習近平主席が延々としゃべり続けるテレビ中継を見せている写真がネット上で複数紹介された。もちろん、ただちに写真はネット上からは削除されたが、こうした写真の流布すること自体が幼児にまで政治を押し付ける風潮に対する人々の嫌気や皮肉を表しているともいえる。

 2012年の前回の党大会からの5年間、メディアの締め付けやインターネットに対する徹底した管理強化、NGOや人権派弁護士など個人の社会的活動の押さえつけ、反腐敗運動による党組織内上から下までの粛清による行政機関の緊張や停滞など、中国国内の政治的な空気がここまで息苦しいものになるとは誰が予想しただろうか。そして、これから先の5年、中国は更にどのようになっていくのだろうか。

「新時代の中国の特色ある社会主義思想」が示す今後の中国

 今回の党大会では、今後の執政の目指すべき方向として「新時代の中国の特色ある社会主義思想」が掲げられた。今後、中国はここで示された堅持すべき14の項目に沿って巨大な官僚機構が動いていくことになる。堅持すべき14の項目とは次のとおりである。

(1)党がすべてをリードし指導する体制
(2)群衆路線中心の政治
(3)国家管理制度の幅広く深い改革
(4)産業の発展の促進
(5)党の制度の下での国民主体の政治
(6)法に基づく国家管理
(7)社会主義の革新的価値体系
(8)社会保障制度の発展と国民生活の改善
(9)自然と人との共生
(10)国家安全に対する意識
(11)党による人民解放軍の絶対的指導
(12)香港・マカオ、台湾に対する従来通りの姿勢
(13)国際社会における平和の建設者・秩序の維持者としての立場
(14)党内の統制の引き締め

 「新時代」の「思想」であるとしているが、全体として目新しさや大きな転換は見られず、従来から提唱されていたことという感が強いし、むしろ党の指導性の強化など、半世紀ほど旧時代に逆戻りしたかのようである。また「思想」というよりは「方針」程度の内容である。香港と台湾に対する厳しい姿勢も今後も続けられ、国際社会に対しても他国との協調よりも中国が主体となって人類の運命共同体の構築を担うという壮大な目標が掲げられている。内政における共産党の指導性の強化と対外的に妥協を許さない強い姿勢はこれから先も過去5年間同様に続いていくことが予想される。

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