世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2017年11月6日

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 フランスのマクロン大統領がEU改造計画を打ち出したことを評価する社説を9月27日付英フィナンシャル・タイムズ紙が掲げています。社説の要旨は以下の通りです。

(iStock.com/Comstock Images/Atypeek)

 マクロン大統領は労働市場改革と歳出削減という難しい国内問題に取り組むことを余儀なくされ、そのことでマクロンの支持率は不可避的に低下している。更に、ドイツの選挙の結果、メルケル首相が欧州について甚だしく異なる見解を持つ政党との連立協議を必要とすることになったことが、マクロンのもう一つの主要な目標であるユーロ圏の統合深化に打撃となっている。

 マクロンは、ドイツの政治地図がはっきりするのを待つのではなく、イニシアチブを取って、EU改造の自らのビジョンを提示した。EUの発展に関するマクロンの100分演説は、大雑把であるが、EU改造の範囲は非常に野心的である。

 マクロンは防衛、テロ対策、自然災害の防止におけるEUの役割の強化を求めた。移民問題に対処するにはEUの難民機関とEUの国境警察が必要だと述べた。金融取引税に言及した。クリーン・エネルギーへの移行を進めるためEU域内におけるより有効な炭素価格制度と域内への輸入に課す炭素税の創設を求めた。多国籍企業による税逃れや極端に低い法人税率を維持する加盟国への対策も提案した。欧州委員会のスリム化、2019年の欧州議会選挙に加盟国共通の選出枠を導入することも提案した。

 これらの考えの多くは新しくはないが、全体的なビジョンは過激なもので、より統合の深化した、そしてフランスが悪意ある外部勢力と見做す、移民や米国のハイテク企業等から、より良く守られた欧州なのである。

 マクロンは、EUの役割の拡大が予算の増額を必要とすることを隠そうとはしない。しかし、その他の面では、ドイツに配慮している。議論を経済問題から防衛、安全、エネルギーに広げることがドイツの関与を容易にする。他方で、ユーロ圏の改革については、マクロンは債務の共通化やユーロ圏の中の弱体な経済に対する過剰に寛大な援助を示唆するような提案は行わなかった。

 ドイツとの摩擦を最小にするよう注意した一方、マクロンはEUの小国の反応にはさしたる配慮は示さなかった。アイルランドは税制の調和推進を直接的な脅威と受け取るかも知れない。社会の連帯の約束はスカンジナビア諸国やバルト諸国には保護主義の推進と聞こえるかも知れない。

 それでも、マクロンのイニシアチブは称賛に価する。EUは過去10年生き残りのために戦って来た。やっと景気回復は軌道に乗った。ポピュリズムの脅威は封じ込められた。これはEUにとって目的意識を再発見する真の機会である。

出典:Financial Times ‘Macron’s bid to reinvent the European project’ (September 27, 2017)
https://www.ft.com/content/c86bca08-a2a9-11e7-b797-b61809486fe2

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