世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2017年11月7日

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 サウジのムハンマド皇太子は、女性の運転解禁を含む野心的な改革を進めようとしているが、上からの一方的な命令で改革を成功させるのは難しい、とエコノミスト誌9月30日号の解説記事が論じています。要旨は次の通りです。

(iStock.com/totallyjamie/stockillustration)

 サウジの聖職者たちは、「女は愚かで運転に不向きだ」、「子宮に悪影響を及ぼす」、「姦通を容易にする」など、時には妙な理由も挙げて、女性の運転禁止を正当化してきたが、コーランを根拠に正当化する者は皆無だった。それも当然で、コーランには女性の運転禁止を正当化する文言は一つもない。

 従って、9月26日の解禁は喜ばしいと共に、とうになされてしかるべき決定だった。解禁は、他国の女性にとって当然の自由をサウジの女性にも与えるだけでなく、男性運転手を雇う必要がなくなり、女性の外出や労働市場への参入を容易にすることによって、経済的利益も生む。女性の運転を禁ずる国は世界でサウジだけであり、これでサウジの異質性も少し減ずるだろう。もっともこれは始まりに過ぎない。

 サウジは長年サウド王家と、極端に厳格なイスラム法の解釈を課すワッハーブ派聖職者との協定によって支配されてきた。また、同国の禁欲主義は、一つには1979年に受けた二重の衝撃――シーア派のイランで起きたイスラム革命と過激スンニ派によるメッカの大モスクの占拠――に対する反応でもあった。王族は私的な場ではよりリベラルな見方も示すものの、聖職者たちとの同盟関係を壊すのを恐れてきた。

 ところが、ムハンマド皇太子(通称MBS)は大胆で、父サルマン国王から経済や国防を含む広範な統治権を与えられると、石油依存からの脱却と産業の多様化、そして、民間部門の活性化による政府雇用の偏重解消を目指す野心的改革計画を策定した。活用されていない最大の人材、すなわち女性の活用は改革の当然の出発点だろう。サウジの大学は男子学生より女子学生の方が多いのに、女性は労働人口の15%でしかない。

 MBSは女性を男性近親者の支配下に置く後見制度や宗教警察の制限も始めている。宗教警察はマニキュアを施す等の違反をした若者をしつこく追いかけたものだ。禁じられていた公開コンサートも今年始まり、1980年代以降、初めての映画館の開設も言われている。

 サウジ人は世界で最もよくネットを活用する人々であり、彼らはより大きな自由を求めている、というMBSの認識は間違っていない。彼は次に後見制度を撤廃し、ワッハーブ派聖職者がサウジの学校や社会政策に対して行使する影響力を抑制すべきだろう。何と言っても、ワッハーブ主義はグローバル・ジハーディズムのイデオロギー的支えの一つなのだ。

 しかし、MBSは大胆な反面、事を性急に進めようとする性向がある。イエメンで戦争を行い、カタールに対する外交的攻撃を先導したが、どちらも成果をあげていない。女性の運転解禁も、国内で最近行った反政府派の弾圧から国民の注意を逸らすべく頃合いを計ったように思える。また、拘留された反政府派の中には改革派や運転解禁を支持した聖職者も含まれており、社会的自由化が反自由主義的手段によって追求されつつある。しかし、MBSが国王令によってその野心的計画を成功させられるとは思えない。彼はもっと同意を得るようにしなければならず、そのためには、議論や意見の相違を許容することを学ぶ必要がある。そして、いずれは何らかの形の民主的協議へと向かわなければならない。

出典:‘At last Saudi women will be allowed to take the wheel’(Economist, September 30, 2017)
https://www.economist.com/news/leaders/21729749-next-abolish-male-guardianship-last-saudi-women-will-be-allowed-take-wheel

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