WEDGE REPORT

2017年11月6日

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嫌々の犯行声明

 容疑者は捜査官に対して、犯行はバグダディの演説に触発されたと供述し、入院先の病室にISの旗を飾ってもいいか、とまで尋ねており、ISとの直接的なつながりは確認されていないものの、ISへの呼応テロであることは確実だろう。

 ISがシリアとイラクの戦場で組織消滅の瀬戸際にあるという客観的な状況を考えれば、自分たちがなお健在であることを示すためにも、すぐにも傘下のアマク通信などを通じて犯行声明を出しそうなものである。なにしろ、サイポフ容疑者は十字軍の親玉である米国の中枢に打撃を与えた“功労者”であるのだ。

 だが、ISは今回、声明を出すのを渋った。2日後になってやっと、ISの週刊紙「アルナダ」を通して「IS戦士が多数の十字軍を殺害した」と認めるに至ったが、サイポフという氏名には言及しなかった。“功労者”に対する扱いとしては極めて冷淡だ。

 米ニューヨーク・タイムズによると、2014年以来のISのテロ約50件を検証した結果、テロの発生から24時間以内に犯行声明が出されるケースがほとんどだった。しかし、テロの実行犯が殉教せずに、逃亡ないしは逮捕された場合は別だ。

 例えば、2015年の130人が犠牲になったパリ同時多発テロでは、実行犯10人のうち、1人を除いて全員の顔写真を掲載して称えたが、生き残って逃亡したアブデルサラムについては存在しなかったような扱いだったし、他のテロ事件でも生存して捕まった場合には犯行声明を出さなかった。

 イスラム国にとって、テロとは「殉教して完結するもの」だからと見られている。今年発生したロンドンやバルセロナのテロ事件では、実行犯たちが見せかけの自爆ベルトを着用していたが、これも自爆されることを恐れた警官らに射殺されることを狙ったからだと考えられている。

 今回のサイポフ容疑者はトラック暴走テロの後、車外に出た時、模擬銃とペンキ弾銃という2丁を持っていたが、いずれも殺傷力はない。これも警官に撃たれて殉教するためだったのではないかと推察されている。

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