使えない上司・使えない部下

2017年11月16日

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「解法」を悟らせるようにするのが、「使える部下」

内田玉實さん

 この院長に限らず、私が看護師として接してきた医師は皆さん、頭がいい。理解力がある。学ぶ意欲も強い。だけど、紙一重なところがある方がいました…(苦笑)。何かの弾みで、とんでもないことになる。ご自身がるんるんと気分が乗っているときは、素晴らしい動きをされます。だけど、看護師、患者さんやご家族と触れるとき、不愉快なものを感じると、それを抑えることができない。露骨に感情を出したり、態度に表す。

 「不愉快になるところ」が、いまひとつ私には読み切れないところがあった。医師に怒鳴られたりすることを繰り返し、少しずつわかるようになるのです。医療スタッフというのは、医師がトップですので…。私たちは、医師の指示の下でしか動けないんですよ。自分で医療判断をできないし、しちゃいけない。それだけの学びもしていない。医師は、徹底的にその学びをしてきています。

 医師は大量の知識を身につけているから、あらかじめ「答え」を理解しています。それでも、経験が浅いと、そこにたどり着く「解法」がすぐには浮かばないときがあるのです。それをさりげなく、悟らせるようにするのが、「使える看護師」や「使えるスタッフ」だと思います。私はまだ、その域には達していないでしょうが。

「自分はすごいよ」という思い込みがないと、伸びないのかもしれない

 こういう在宅医療クリニックで看護師として長く勤務すると、勘違いをする人もいるのです。私が以前、ほかの在宅医療クリニックの経営者から相談を受けたケースを簡単に紹介します。医師から何かを頼まれても、バカにしたような態度をとるベテランの看護師がいるようなのです。
 
 医師はその看護師を敵に回し、看護師全員で徒党を組まれたくない。それでは、患者さんにも迷惑をかけてしまう。だから、医師はぐっとこらえる。我慢を重ねた末で、クリニックの経営者に相談をしたようです。「あの看護師をなんとかしてほしい」と…。

 しかも、この看護師はほかの優秀な看護師に厳しくあたり、辞めるように仕向けるみたい。そのクリニックはこのような看護師にも一定の役職を与え、待遇をよくしていかざるを得ない。この業界は慢性的に人手不足であり、今は深刻な状況なのです。

 すると、看護師はますます、勘違いをする。いよいよ、困ったことになったようなのです。私の数十年の経験をもとに言えば、このタイプの看護師は得てして自己顕示欲が強い。それは、必ずしも悪いことばかりじゃない。「自分はすごいよ」っていう思い込みが本人にないと、伸びないのかもしれないと思うときがあります。優秀な人って、自己顕示欲が強いものですよ。

 その思い込みが強すぎると、自分にはすごい才能があると信じ込み、部下などに感謝ができなくなる。おのれよりも能力が高い部下がいると、排除する。こうなると、「最悪の上司」でしょう。クリニックを経営する側からすると、「使えない管理職」です。

 経営する側からすると、管理職にしろ、その下にいる人にしろ、いいところはできるだけ認めて、そこを伸ばしたい。その人が苦手としているところは、みんなでカバーしたほうがいい。少なくとも、これが私の鉄則なんです。

 その思いを感じ取れないほどに、「自分はすごいよ」っていう思い込みがひどくなると、経営する側からするとその人を普通に扱うことは難しいかもしれませんね。結局、医師、看護師、患者さんやご家族に迷惑をかけてしまう。一般的には、看護師はおせっかいなのです…(笑)。

 先日、私は病に倒れ、入院をしました。一時期、死ぬんじゃないか、という状態になった。意識がないときに、他界した父親が夢に現れた。「まだ、ここに来るのは早い」と伝えようとしていたみたい。私はこのクリニックの経営をきちんとして、後継者にバトンタッチしたい。それが、創業者の責任だから。

(冒頭の)怒る院長? あの方も真剣だったのでしょうね。結局、その後、お辞めになられました。今は新しい医師が院長に就任され、新体制となりました。情熱家の院長の下、優秀な看護師やスタッフが「365日24時間態勢」でがんばっていますよ。地元の皆さんに支えられ、ここまで来ることができましたらから、せめてもの恩返しをさせていただきたいのです。

  
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