韓国の「読み方」

2017年11月13日

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澤田克己 (さわだ・かつみ)

毎日新聞記者、前ソウル支局長

1967年埼玉県生まれ。慶応義塾大法学部卒、91年毎日新聞入社。99~04年ソウル、05~09年ジュネーブに勤務し、11~15年ソウル支局。15年5月から論説委員。著書に『「脱日」する韓国』(06年、ユビキタスタジオ)、『韓国「反日」の真相』(15年、文春新書、アジア・太平洋賞特別賞)、訳書に『天国の国境を越える』(13年、東洋経済新報社)。礒﨑敦仁慶応義塾大准教授との共著『LIVE講義 北朝鮮入門』(10年、東洋経済新報社)を大幅に改訂した『新版 北朝鮮入門』(東洋経済新報社)を17年1月に刊行予定。

 韓国紙の反応は二つに割れた。文在寅政権に批判的な保守系・朝鮮日報の社説は「未来の主権を譲歩した」と猛烈に批判した。「この兵器は導入しない」と他国に約束する主権国家がどこにあるのか、ということだ。朝鮮日報だって日本を含めた軍事同盟に否定的であることは変わらないが、それは韓国が自らの意思で決めることだという社説の主張は当然だろう。一方で文政権に近い進歩派のハンギョレ新聞や京郷新聞の社説は歓迎一色であり、中国に対する警戒感などまったくうかがえない。

 青瓦台(大統領府)高官はその後、9月にニューヨークで行われた日米韓首脳会談で文大統領が「米国とは同盟関係にあるが、日本は同盟ではない」と発言したと韓国メディアにリークした。日米韓の安保協力強化を求めると予想されたトランプ米大統領が訪韓する直前のことだ。これも、中国を意識したリークだろう。

 一方、米国のマクマスター米大統領補佐官はトランプ大統領のアジア歴訪を前に韓国を含む訪問国メディアと行った会見で、「韓国が(問題となった)3つの領域で主権を放棄するとは考えていない。外相の発言は確定的なものではないと思う」と語り、韓国をけん制した。

中国けん制の「インド太平洋戦略」でも温度差

 11月7日の米韓首脳会談は、北朝鮮問題での「最大限の圧力」で一致したものの、中国けん制という意味合いのある「自由で開かれたインド太平洋戦略」については立場の違いが表面化した。韓国の聯合ニュースによると、青瓦台高官は「トランプ大統領が首脳会談でインド太平洋地域安保に韓国も参加するよう求めたが、文大統領が受け入れなかった」と話した。

 結局、会談翌日の8日深夜に発表された共同報道発表文には「トランプ大統領は相互の信頼と自由・民主主義・人権・法の支配など共同の価値に基づく米韓同盟がインド太平洋地域の安保、安定と繁栄のための核心的な軸であると強調した」と盛り込まれた。主語が「両首脳は」となっていないのは、文大統領が賛同しなかったという意味だ。

 文大統領は、トランプ大統領の出国直後に自らも東南アジア外遊に出た。同行した金顕哲大統領経済補佐官は9日、韓国記者団に対するブリーフでインド太平洋戦略についての考え方を明らかにした。金補佐官は、物流ハブとして重要な東南アジアを「大陸勢力と海洋勢力がぶつかる要衝の地」だと指摘。「だから日本は、日本、豪州、インド、米国を結ぶという外交的なラインを構築しようとしているが、我々がそこに編入される必要はない」と述べた。韓国では通常、中国とロシアを大陸勢力、日米を海洋勢力と呼んでいる。

 青瓦台はさらに同日夕、インド太平洋戦略について「適切な地域概念なのかについてもう少し協議が必要だと判断した」という立場を明らかにした。

 安倍政権はインド太平洋戦略について、日米と豪州、インドという4カ国の連携で中国をけん制するものと考えている。ただ豪州やインドは「中国封じ込め策」と見られるのを嫌がっている側面があり、必ずしも日本と対中認識が一致しているわけではない。それでも日本で安倍首相とインド太平洋戦略をぶち上げたばかりのトランプ大統領を迎えた韓国が、この戦略から距離を置いている姿をここまで強調するのは不自然だ。韓国の真意はどうであれ、やはり中国の意向を気にしていると見られるのは仕方ないだろう。

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