世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2017年11月21日

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 プーチンは東独ドレスデン駐在のKGB工作員として東独の崩壊を目の当たりにした後、KGBを辞め、出身地のサンクトペテルブルクに戻りました。同市では改革派のサプチャク市長に取り立てられ、副市長を務めました。その後、モスクワに移り、現在の地位を築いていきました。サプチャク(父)には、政治家として成長していくきっかけを作ってもらったと言えます。そのいわば恩人の娘が反プーチンを掲げ、来年3月の大統領選に出るというのはニュースです。

 しかし、多くのロシア人には36歳の女性クセニア・サプチャクがロシアの指導者になるというのは考え難いことでしょう。この立候補は反プーチン派を分裂させる効果しかないでしょう。プーチンが「管理された」民主主義の選挙への有権者の無関心を是正するために、彼女に立候補を進めたのかどうかはわかりませんが、そうであったとしても驚きではありません。

 プーチンは反対派の有力政治家をすべて潰してきました。その結果、独裁的権力を得ましたが、政権選択選挙という民主主義の根幹を意味のないものにしてしまいました。有権者が興味を失うのも当然で、あまりに成功しすぎて、低い投票率の大統領選挙になってしまう危険を作り出したと言えます。ただソ連時代の選挙は選択をする選挙ではなく、政権への支持を表明するための選挙でありました。そのために動員された有権者が高い投票率で投票したとの歴史があります。それが繰り返される可能性もあります。

 今のロシアの政治には競争がかけていることに大きな問題があります。「絶対的権力は絶対的に腐敗する」と言いますが、そうなっています。

 しかし、それ以上に問題なのは、プーチンが後継者を育てていない点にあります。昔、後継者かと言われたセルゲイ・イワノフはどこかに行ってしまいましたし、メドヴェージェフがまた後継者になるシナリオもありません。ショイグ国防相はプーチンの信任が厚いですが、少数民族出身であり、大統領には不向きです。

 プーチンが鄧小平的な最高指導者となるかどうかについては、若者が不穏であるからない、というより、中ロの文化、システムの違いから難しいように思われます。中国は儒教の国であり、長老を敬いますが、ロシアにはその文化はありません。ロシアの民主主義はいま形骸化していますが、制度としては選挙もありますし、状況が変われば復活し得ます。他方、中国では、5年ごとの共産党大会で、選挙ではないやり方で最高指導者を選んでいます。後者のシステムが鄧小平的な存在を可能にしたように思われます。

  
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